微量元素欠乏症(読み)びりょうげんそけつぼうしょう

家庭医学館 「微量元素欠乏症」の解説

びりょうげんそけつぼうしょう【微量元素欠乏症】

 体内では、さまざまな物質が合成されたり分解されたりしていますが、こうした過程は、いろいろな酵素(こうそ)というものがなくてはできません。この酵素のはたらきは、そのなかにある金属元素(ミネラル成分)なしではおこりません。
 このような元素は、食物からとるほかなく、欠かせないものなので、必須微量元素(ひっすびりょうげんそ)と呼んでいます。
 必須微量元素には、亜鉛(あえん)、銅、クロムヨードコバルトセレンマンガンモリブデンなどがありますが、これらが欠乏した状態が微量元素欠乏症です。これらの元素のうち、亜鉛と銅の欠乏症がよく知られています。
 ふつうの食生活をしているかぎり、微量元素欠乏症になることはありません。
 最近よく行なわれている、点滴だけの栄養補給(高カロリー輸液)を長期間続けた場合におこります。
 脳卒中(のうそっちゅう)の後遺症などで、食べることができず、栄養食だけで栄養をとっている場合にもおこることがあります。
 亜鉛欠乏症の症状は、高カロリー輸液時にしばしばみられ、顔や股部(こぶ)に水疱(すいほう)や化膿かのう)をともなう発疹(ほっしん)ができ、しだいに全身に広がっていきます。また、脱毛(だつもう)や爪(つめ)の変化、さらに口内炎(こうないえん)や腹痛、吐(は)き気(け)、下痢(げり)などの腹部症状も現われます。
 銅欠乏症の症状は、高カロリー輸液を始めてから数か月後にみられ、白血球(はっけっきゅう)の減少、貧血(ひんけつ)、骨の変形(小児の場合)などが現われます。
 セレン欠乏症の症状は、1年以上にわたり高カロリー輸液を行なうとみられます。不整脈(ふせいみゃく)や心不全(しんふぜん)がおこる場合と、脚(あし)に筋肉痛がおこる場合とがあります。
●検査
 血液中の微量元素の測定を行ないます。
●治療
 高カロリー輸液用の微量元素剤が使用されます。これを輸液に入れ、点滴で補給します。

出典 小学館家庭医学館について 情報

内科学 第10版 「微量元素欠乏症」の解説

微量元素欠乏症(その他の代謝異常)

 微量元素は体内での含有量が10 g以下で,1日の摂取量が100 mg以下の元素をいう.そのうち生命活動に必要不可欠な必須微量元素は27種とされており,鉄,亜鉛,銅,イオウ,クロム,コバルト,セレン,マンガン,モリブデン,ケイ素,フッ素,バナジウム,ニッケル,錫,ヨウ素などがある.[武田英二・山本浩範]

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