改訂新版 世界大百科事典 「心御柱」の意味・わかりやすい解説
心御柱 (しんのみはしら)
伊勢両宮の神殿の床下中央に建てられた檜の掘立柱をいう。〈正殿心柱〉(皇太神宮儀式帳)といい,つまり社殿の中心に立つゆえの名(《古事記伝》)だが,別に社殿の実用的な支柱でなく,しかも神宮祭祀上きわめて清浄神秘を重んじられる柱として特に忌柱(いむはしら)とも称される。20年ごとの式年遷宮に当たって,特別にその用材を伐採するための木本祭と,これを建てる心御柱祭とがいずれも夜間の秘儀として執行され,奉仕者も禰宜,大物忌など特定の神職に限られる。1279年(弘安2)の遷宮などの諸記録によれば,柱は地上3尺3寸,地中2尺ほどに埋め立て,終われば榊の枝で柱を包み隠す。地鎮,立柱の神事とは別に行われる重儀なので,この柱の意義について祭祀上の神籬(ひもろぎ)か,建築上の計測基準かなど定説はないが,記紀神話や《延喜式》祝詞に頻出する柱の意味を考慮すると,古代宗教の世界観に重要な宇宙軸の一種と考えられよう。
→柱
執筆者:薗田 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報