忝・辱(読み)かたじけない

精選版 日本国語大辞典 「忝・辱」の意味・読み・例文・類語

かたじけな・い【忝・辱】

〘形口〙 かたじけな・し 〘形ク〙 (高貴なものに対して下賤なことを恐れ屈する気持を表わす)
① 高貴なものが、いやしいものに接していることがもったいない。おそれ多い。恐縮だ。申しわけない。
書紀(720)神代下(水戸本訓)「今者(いま)、天神之孫(みこ)(カタジケナク)吾処(あがもと)に臨(いでま)す。中心(こころ)欣慶(よろこび)、何の日か忘れむ」
※竹取(9C末‐10C初)「忝なく、きたなげなる所に、年月をへて物し給事、きはまりたるかしこまりと申」
② 尊ぶべきものと比べて恥ずかしい。わが身が面目ない。
※続日本紀‐宝亀三年(772)五月二七日・宣命「天の下の百姓(おほみたから)の思へらまくも恥づかし、賀多自気奈(カタジケナシ)
③ 分に過ぎた恩恵好意、親切を受けて、ありがたくうれしい。もったいない。
※宇津保(970‐999頃)蔵開中「『さて、かかる物をなん給ひて侍る』とて、帯を見せ奉り給ふ。これはさ聞く御帯也。いとかたじけなくたまはせためるは」
源氏(1001‐14頃)桐壺「身にあまるまでの御心ざしの、よろづにかたじけなきに、人げなき恥ぢをかくしつつまじらひ給ふめりつるを」
[語誌](1)「源氏物語」では、上位者への恐縮や感謝の気持を表わすが、「かしこし」ほど畏敬の念は強くない。狂言では、「ありがたい」がより敬意の高い語として用いられるようになる。
(2)「浪花聞書」によれば、近世大坂では、「ありがたい」という言い方はあまりなく、「かたじけない」を上位者に対して使っていたが、江戸では下位者に対してだけ使われたという。
かたじけな‐が・る
〘自ラ四〙
かたじけな‐げ
〘形動〙
かたじけな‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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