急性小児片麻痺(読み)きゅうせいしょうにへんまひ(英語表記)Acute infantile hemiplegia

六訂版 家庭医学大全科 「急性小児片麻痺」の解説

急性小児片麻痺
きゅうせいしょうにへんまひ
Acute infantile hemiplegia
(子どもの病気)

どんな病気か

 体の片側けいれんが続いたあとに、あるいは何の前触れもなく、片麻痺を来す病気です。6歳以前の乳幼児にみられます。

原因は何か

 原因不明なもの(25%)と、基礎疾患髄膜炎(ずいまくえん)脳炎(のうえん)頭部外傷、脳血管奇形、心疾患、血液疾患、代謝(たいしゃ)疾患など)に合併した脳血管障害血栓塞栓(そくせん)、出血)によるもの(75%)があります。

症状の現れ方

 かぜの症状発熱に伴って、主に半身のけいれん(手足を急に何度も曲げ伸ばしする型の不自然な動き)が現れ、それが治療の有無にかかわらず数時間続いたあとで片麻痺(半身の筋力低下)が起こります。前触れがなく突然に片麻痺を来すこともあります。前者は原因不明、後者脳血管障害によるものが多くを占めます。

検査と診断

 片麻痺があることで診断します。基礎疾患を調べるため、血液、髄液(ずいえき)脳波、脳・血管画像、心臓超音波などの検査が必要です。

治療の方法

 入院して全身管理をしながら、けいれんに対して抗けいれん薬使用し、脳浮腫(のうふしゅ)の治療(輸液制限、濃グリセリン・果糖の点滴)も行います。基礎疾患があればその治療もします。

 片麻痺の小児の20%は回復しますが、80%は回復せず、麻痺した手足は次第に硬くなるためリハビリテーションが必要です。精神発達の遅れやてんかんを伴うことがあります。

病気に気づいたらどうする

 半身のけいれんが現れたら、救急車を呼んで小児科を受診してください。突然の片麻痺に気づいたときも、小児科を受診してください。

関連項目

 髄膜炎、脳炎

千田 勝一

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「急性小児片麻痺」の解説

きゅうせいしょうにへんまひ【急性小児片まひ Acute Infantile Hemiplegia】

[どんな病気か]
 急な発熱とともに意識障害におちいり、からだの片側にけいれん(半身けいれん)がおこります。このけいれんは、いったんおこると長時間続く(けいれん重積)ことが多いものです。
 けいれんがやっと止まっても、意識障害が数日続き、その後にからだの片側にまひ(片(へん)まひ)が残ります。
 後に知的障害やてんかんがおこる頻度が高くなっています。ふつう、3歳以下の子どもにおこります。
 脳の血管障害、髄膜炎(ずいまくえん)などいろいろなことが原因になりますが、原因がわからないケースもあります。
[検査と診断]
 熱性けいれん、てんかん、髄膜炎、急性脳症、脳血管障害などの多くの病気との鑑別が必要です。そのため、入院し、血液、髄液(ずいえき)、脳波、CT、MRIなどの詳しい検査をする必要があります。
 CTなどの画像診断では、最初大脳半球(だいのうはんきゅう)の片側(けいれんをおこした反対側)に浮腫(ふしゅ)(むくみ)がみられ、やがて萎縮(いしゅく)(縮む)していくようすが観察されます。
 脳波検査では、波形に左右差がみられ、やがて、てんかん性の異常波が出てくることがあります。
[治療]
 急性期(病気のおこり始め)には、けいれんを止めて、脳を保護する治療(抗けいれん薬や脳浮腫をとる薬の使用、酸素吸入)を行ないます。症状が落ちついたら、後遺症に対する治療を行ないます。
 まひには機能訓練、てんかんには抗けいれん薬の使用を行ないます。知的障害がみられる場合は、教育上の配慮が必要になります。
 障害が高度の場合は、専門の訓練施設へ通院することもあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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