急性耳下腺炎、急性顎下腺炎など

六訂版 家庭医学大全科 の解説

急性耳下腺炎、急性顎下腺炎など
(のどの病気)

 耳下腺顎下腺急性炎症の多くはウイルス細菌により生じます。ウイルス性の急性炎症で最もよく知られていて罹患例数も多いのは、流行性耳下腺炎、すなわちおたふくかぜです。おたふくかぜのウイルスが口や鼻から感染し、増殖したウイルスが血液を介して全身に広がり、唾液腺に達したものが耳下腺炎や顎下腺炎を引き起こします。

 症状が出始めると、全身倦怠感(けんたいかん)発熱、頭痛などを伴い、多くは両側の耳下腺腫脹(しゅちょう)が起こります。腫脹は48時間で最もひどくなり、2~10日続きます。はれが取れるまでは他に感染させる可能性があります。診断には潜伏期間としての2~3週間以前に、感染者との接触があったかどうか、また周囲の流行状況の把握が重要です。唾液管(だえきかん)開口部の発赤や、検査では血液アミラーゼ値の上昇などが参考になります。確定診断にはウイルスの抗体価の測定が必要です。

 細菌性の急性唾液腺炎(だえきせんえん)は、抵抗力の落ちた全身状態の悪い人以外では、耳下腺や顎下腺そのものに何らかの異常がある場合に生じるのが普通です。耳下腺では、唾液管末端拡張症(だえきかんまったんかくちょうしょう)といわれる小児の病気や、シェーグレン症候群などの場合に発症することがあります。

 しかし、細菌性の急性炎症の多くは顎下腺に生じ、その原因のほとんどは唾石(だせき)によるものです。顎下部が発熱、痛みを伴い強くはれ、ひどい場合は膿瘍化(のうようか)し、(くび)のほうまではれてしまいます。皮膚が赤くなることもあります。舌と下顎骨(かがくこつ)の間が赤くはれ、下顎正中内側にある唾液管の開口部からはうみが出ます。膿瘍化した場合は、切開してうみを出す必要があります。口のなかのはれた部分が破れて自然に石が出ることもあります。

 いずれにしても細菌性の急性炎症の場合は、抗生剤の投与が必要です。唾石では消炎後、唾石に対する手術治療が必要です。唾液が唾液管内にたまることが細菌感染の原因と考えられる唾液管末端拡張症などでは、細菌感染を予防する治療法として、唾液の排出を促すための1日1回の耳下腺マッサージがすすめられます。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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