性比(読み)せいひ(英語表記)sex ratio

翻訳|sex ratio

精選版 日本国語大辞典 「性比」の意味・読み・例文・類語

せい‐ひ【性比】

〘名〙 同じ種内での雌雄の個体数の比率。一般に雌の個体数または全個体数に対する雄の個体数の割合で表わす。性染色体による性決定に従うと雌雄はほぼ同数生ずるはずであるが、種類によって異なる。ヒトの出生時の性比は男性の方がやや多い。

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デジタル大辞泉 「性比」の意味・読み・例文・類語

せい‐ひ【性比】

同一種の雌雄の個体数の比率。ふつう雌個体数を1または100とし、それに対する雄個体の比で表す。人間では出生時に男性のほうが多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「性比」の意味・わかりやすい解説

性比 (せいひ)
sex ratio

同一種の雌個体の数と雄個体の数の比をいう。雌個体(1または100)に対する雄個体の割合,あるいは全個体数に対する雄個体数の百分率で表す。植物でも雌雄異株のものでは性比が問題になり,スイバは性比が大きく雌にかたよっているので有名である(約1:0.5)。動物では一般に雌雄で死亡率に差があるため性比は生活史の諸段階で異なる。受精時の性比を一次性比,出生時のものを二次性比,その後のものを三次性比という場合がある。鳥類哺乳類のように性染色体により性が決定する場合には,性比はほぼ1:1となるが,かたよる場合も少なくない。たとえば,膜翅(まくし)類(ハチやアリ類)の昆虫では受精卵から倍数体の雌が,未受精卵からは半数体の雄が孵化(ふか)する。同様に,アリマキギンブナなどでは単為生殖により雌のみが生じる。性の決定が環境に左右される場合は性比がかたよる。たとえば,海産のボネリムシBonellia幼生は単独では雌に発生するが,雌が存在すると吻(ふん)に付着して雄になる。サンゴ礁魚のホンソメワケベラは1匹の雄と数匹の雌と数匹の未成魚が群れを作っているが,雄がいなくなると優位の雌が性転換して雄になる。線形動物メリミスの幼生は昆虫に寄生しているが,宿主あたりの卵数が多くなると性比が雄にかたよる。爬虫類では孵卵温度で性比が影響されるものがある。カメでは温度が高くなると雌が増し,トカゲやワニでは逆に,温度が高くなると雄にかたよる。カミツキガメではある温度範囲で雄が生じ,それよりも高くても低くても雌になることが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「性比」の意味・わかりやすい解説

性比
せいひ

雌雄異体の生物において、同一種内の雌雄の個体数の比をいう。性比は雌個体1または100に対する雄個体の割合で示すことが多い。性染色体による性の決定が行われるならば、理論的には1対1、または、100対100になり、雌雄はほぼ同数となる。しかし、ヒトの場合は平均して女児よりも男児のほうが多く生まれる。このように、性比が偏ることがある。その原因のうち、単為生殖で性の一方のみが生まれる場合(ミツバチ、アリマキ、ミジンコ、ワムシ類など)がもっとも性比が偏る。また、性染色体がXY型のとき、二型の精子に運動能力の差がみられたり、減数分裂後に一方の精子が淘汰(とうた)されたり、性染色体の不分離が生じると、性比が偏る。ZW型の場合、卵の成熟分裂の過程で、一方の性染色体が極体放出時に放棄されやすい場合に性比が偏る。ショウジョウバエでも雌ばかり生まれてくる例がある。これには二つの原因があるが、その一因としては性決定に関連した突然変異遺伝子があり、その遺伝子をもつ雄では、減数分裂中にY染色体がほとんど退化し精子のほとんどがX型となるからである。もう一つの原因としてスピロヘータがあげられる。この微生物は、雌から卵を通して次の世代に伝えられる。スピロヘータをもった雌と正常雄とが交雑し受精卵をもつと、XY型の受精卵が選択的に発生途中でスピロヘータにより殺される。こうして、胚(はい)はほとんどが雌となる。性比の偏る原因として、致死遺伝子の関与する場合もある。

[高橋純夫]

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百科事典マイペディア 「性比」の意味・わかりやすい解説

性比【せいひ】

雌雄の数の割合。普通,雌の数100(または1)に対する雄の割合,あるいは全個体数に対する雄の比率で表す。性の決定は遺伝法則に従うため,雌雄は1対1の比率で生ずるはずだが,実際にはいくらかずれ,そのかたよりは種によってほぼ決まっている。出生時の性比(出生性比)ではニワトリ94.7,ウマ98.3,ウシ107.3など。また同一種でも雌雄の死亡率が受精,出生,成長の各段階において異なるため性比は一定せず,特にクロダイなど性転換を行う種類で変動が激しい。爬虫(はちゅう)類では孵卵(ふらん)温度によって性が決定される種があり,性比は一定しない。人間では出生性比は106くらいで男子が多いのが普通だが,男子の死亡率が高いため,ほぼ45歳以上では女子のほうが多くなる。→

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「性比」の意味・わかりやすい解説

性比
せいひ
sex ratio

同一種内での雌と雄の個体数の比率。性比は普通雌個体1または 100に対する雄個体の割合,あるいは全個体数に対する雄 (まれに雌) 個体数の百分率で表わす。性比は雌雄間の死亡率の差によって年齢に従って変化する。受精卵でのものを一次性比,出生時のものを二次性比,その後のものを三次性比として区別する。ヒトの場合,前2者では男が多いが三次性比では女が多い。性染色体による通常の性決定様式による場合には,雌雄はほぼ同数生じ,性比は 1:1 となるはずであるが,実際にはこのとおりにならない場合がある。この原因としては,たとえば性染色体が XY型であれば2型の精子の運動力の差による受精競争の差などが考えられ,また環境要因の影響も知られている。また性比が最もかたよるのはアリマキなどのように単為生殖で雌だけが生れる場合などである。

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栄養・生化学辞典 「性比」の解説

性比

 男性と女性の比率.

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世界大百科事典(旧版)内の性比の言及

【性染色体】より

…成熟分裂の結果生じた卵には3A+Xの1種しかできないが,精子には3A+Xと3A+Yの2種を生じ,3A+Xの精子で受精がおこると雌を生じ,3A+Yの精子が受精にあずかると雄を生ずる。この受精はほぼランダムにおこるので,生じてくる雌と雄の比率(これを性比という)は1:1になる。 性染色体の上に座位を占める遺伝子の遺伝様式は,常染色体の上にあるそれらとは異なる遺伝様式をとり,これを伴性遺伝という。…

※「性比」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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