改訂新版 世界大百科事典 「恒常所得」の意味・わかりやすい解説
恒常所得 (こうじょうしょとく)
第2次大戦後,アメリカの消費需要の予測精度を高めるという目的とS.クズネッツの提起した貯蓄率変動の理論的解明という目的とから,いわゆる消費関数論争が展開された。その論争のなかでM.フリードマンは,恒常所得仮説permanent income hypothesisを提唱した。フリードマンは,実際に観測される所得measured incomeを恒常的所得部分permanent incomeと変動的所得部分transitory incomeに分けたうえで,貯蓄率の変動を前者の恒常所得に依存する長期的趨勢分と後者の変動所得に依存する短期的変動分とに分けて説明しようと試みる。このように恒常所得とは,短期的に変動しない確実な所得部分を意味するが,実際にその理論的対応物を実証的にとらえようとすると困難な場合が多い。
→消費関数
執筆者:黒田 昌裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報