慢性血栓塞栓性肺高血圧症(読み)マンセイケッセンソクセンセイハイコウケツアツショウ

デジタル大辞泉 の解説

まんせいけっせんそくせんせい‐はいこうけつあつしょう〔‐ハイカウケツアツシヤウ〕【慢性血栓塞栓性肺高血圧症】

器質化した血栓によって慢性的に肺動脈閉塞し、血液が流れにくくなって、肺高血圧症となる病気。体を動かすときに、呼吸困難・易疲労感・動悸どうき胸痛失神などの自覚症状がみられる。特定疾患の一つ。CTEPHシーテフ(chronic thromoboembolic pulmonary hypertension)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

慢性血栓塞栓性肺高血圧症
まんせいけっせんそくせんせいはいこうけつあつしょう

心臓から肺に血液を送るための血管である肺動脈が血栓により慢性的に閉塞し、肺動脈圧が上昇して労作時に息切れなどの症状がある疾患。英語表記chronic thromboembolic pulmonary hypertensionの頭文字をとって、CTEPH(シーテフ)と略される。指定難病。日本での発症率は欧米諸国と比べて低く、アメリカの10分の1くらいであるが増加傾向がみられ、2013年度(平成25)末時点の患者数は約2200名である。肺血管の40%以上の閉塞がみられる例が多く、血栓の反復や進展、血栓のない部位の二次的な血管障害などが病態に関与していると考えられている。

 症状は、労作時に息苦しく感じることであり、患者には過去に少なくとも1回は、突然の呼吸困難、胸痛、失神など急性肺動脈血栓塞栓症肺塞栓症)による症状や、下肢腫脹(しゅちょう)や疼痛(とうつう)などの肺動脈血栓塞栓症の原因となる深部静脈血栓症による症状がみられる。また、この疾患に矛盾しない胸部の診察所見も認められる。診断には、血液検査、胸部X線検査、心電図心エコー検査などに加えて、心臓カテーテル検査肺シンチグラム、胸部CT検査、肺動脈撮影などが行われる。治療は、血栓に対する薬物療法、肺動脈血栓内膜摘除術、経皮経管的肺動脈拡張術のほかに、血栓を予防するために、抗凝固療法や下大静脈フィルターを留置する場合もある。在宅酸素療法も行われる。

[大久保昭行 2016年6月20日]

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