生体に同じ刺激が繰り返し、持続して与えられるとき、刺激に対する反応が減少し、消失する過程をいう。環境に新たに刺激の変化があり、比較的短時間、この刺激の繰り返しは反応を強める。これは慣れに対して増感化(感作)sensitizationという。慣れも増感化も原始的な生体の反応で、中枢神経系の未発達な腔腸(こうちょう)動物などにも明らかに認められる。
物音に耳を立てるイヌの方位反応は、これが繰り返されると消失する。しかし、間を置いてふたたび物音がすると反応は回復する。反応の消失過程そのものは消去extinctionと異ならないが、消去は条件刺激の除去により、慣れは刺激の反復による。慣れで消失した反応は刺激の間を置くだけでなく、新たに別の刺激を与えると回復することがあり、これを慣れの解除dishabituationという。疲労の場合には消失した反応は別の刺激を与えても回復しないし、暗順応・明順応などの経過も慣れとは異なる。
[小川 隆]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,従来は動物の行動を本能と学習に二分する考え方が支配的であったが,近年の研究によって,純粋な学習とみられるものもしばしば何を,いつ,どこで学習するかといった面で遺伝的に決定されていることが明らかにされ,現在ではこのような二分法は有効性を失いつつある。
[慣れhabituation]
もっとも単純な形の学習は慣れで,これは,とくに刺激の強化が加えられなくても無害な環境には反応を示さなくなるようなものである。キジなど地上営巣する鳥の雛は,孵化(ふか)後,最初は頭上をかすめるすべての影に対して警戒のうずくまり姿勢を示すが,やがて木の葉や無害な小鳥が横切った程度では警戒姿勢を示さなくなる。…
※「慣れ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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