デジタル大辞泉
「懲」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ころ・す【懲】
〘他サ四〙
※宇治拾遺(1221頃)一五「今よりのち、かくのごとくあやしきこといはむ者をば、ころさしむべきものなり」
※土井本周易抄(1477)三「足懲 足がこるるのみぞ。
江家にはこらす、
菅家にはころすと云点ぞ」
[語誌](1)自動詞上二段活用「懲る」の他動詞形。「殺す」と同系の語とする説もあるが、
アクセントが異なる(懲ろす 平平上、殺す 上上平)ので、別語と考えるべきか。
(2)
漢文訓読に特有の語で、
和文には見られない。「
打聞集‐釈迦如来験事」の「今ころしむべきなりとて、獄に坐られぬ」などに見える「ころしむ」は、「懲す」の使役形。
こら・す【懲】
〘他サ五(四)〙
① 懲りて
二度としないようにさせる。過ちを責めて戒める。懲りさせる。ころす。
※
書紀(720)推古一二年四月(岩崎本室町時代訓)「悪
(あしき)を懲
(コラ)し善
(ほまれ)を勧むるは、古の良
(よ)き典
(のり)なり」
② 苦しめる。
こ・りる【懲】
〘自ラ上一〙 こ・る 〘自ラ上二〙
失敗や
過失による
痛手、
衝撃で、二度とやるまいと思う。苦い経験から、もうやるまいと思う。
※
万葉(8C後)三・三八四「吾がやどにからあゐ蒔
(ま)きおほし干れぬれど懲
(こり)ずてまたも蒔かむとそ思ふ」
※
滑稽本・
浮世風呂(1809‐13)二「ひょっと
余所(よそ)のお子さまが云告
(いっつけ)にお出なすったら、我子をこりるほど
折檻する事さ」
こらし・める【懲】
〘他マ下一〙 こらし・む 〘他マ下二〙
① 懲りさせる。懲りて二度としないようにさせる。
※
御伽草子・るし
長者(室町時代物語大成所収)(室町末)「まつだいの人をこらしめんために
もとて、
しかのみるまへにて、かのおとこをころされけり」
ちょう‐・ず【懲】
〘他サ変〙 こらしめる。罰を加えてこりさせる。
※
落窪(10C後)三「ちょうずべき限りはあまたたびしてき」
[
補注]
挙例の「
落窪物語」は寛政六年木活字本のかな遣いによったが、これは確実というものではなく「てうず(調)」また「ちゃうず(打)」と考えることもできる。
こらしめ【懲】
〘名〙 (動詞「こらしめる(懲)」の連用形の名詞化) 懲らしめること。懲りるようにすること。こらし。
※御伽草子・朝顔の露(室町時代物語集所収)(室町末)「御いたはしくは候へ共、しばし御こらしめのためなれば」
こり【懲】
〘名〙 懲りること。こりごりすること。
※玉塵抄(1563)二八「次の王に前のこそ玉を知しむことなけれ、今の王は知れうと思てこりもなう又ささげたぞ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報