成田郷
なりたごう
現熊谷市東部から行田市西部にまたがる地域に比定され、星川や忍川の水源近くに位置する。成田氏の本貫地で、「風土記稿」は江戸期の埼玉郡上之村について「古ハ成田村トイヘリ」と記す。上之の堀の内は成田氏館跡といわれ、同地内には応永一八年（一四一一）に成田家時が開創したという龍淵寺がある。成田系図（龍淵寺蔵）によると、成田氏の始祖助高は幡羅郡に住して助隆ともいわれ、その嫡男助広が成田氏を継ぎ、次男行隆は別符氏、三男高長は奈良氏、四男助実は玉井氏を称している。一族は鎌倉幕府の御家人で、文治五年（一一八九）の奥州合戦に従軍した成田七郎助綱（助広の子）など、「吾妻鏡」にしばしば登場している。正中二年（一三二五）一二月六日の安保行員譲状案（八坂神社文書）には、沙弥信阿（安保行員）が嫡子基員に譲与した所領として「むさしの国きさいの郡なりたの郷地頭くんしゝき、はこたの村、ひらとの村」などがみえ、箱田村・平戸村も成田郷に含まれていたと考えられる。
成田郷
なりたごう
大日経疏奥書（宝生院経蔵図書目録）の元亨三年（一三二三）の奥書に「甲州成田郷」とみえ、相模国海老名庄（現神奈川県海老名市）の僧が当郷において書写している。永禄八年（一五六五）六月二六日、細工奉公の賞として当地土屋民部丞分のうち三貫文が轆轤師堀内左京進に与えられている（「穴山信君判物写」甲州古文書）。天正一〇年（一五八二）三月一〇日、土屋次郎右衛門尉は本領である当郷のうち曾子分六二貫文を与えられているが（「武田家印判状写」同古文書）、その翌日に武田勝頼が自刃するに及び武田家は滅亡した。同年八月一三日徳川家康は有賀式部助に成田のうち一八貫文と同所常葉分一八貫文を安堵し（「徳川家印判状写」記録御用所本古文書）、二〇日には当地手作五貫文などを前島又次郎に（「徳川家印判状写」譜牒余録）、二一日には駒井右京進政直に地内の正法寺分一〇〇貫文を（「徳川家印判状写」記録御用所本古文書）、本領との言上に基づき次々と安堵した。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
