戸令(読み)こりょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「戸令」の意味・わかりやすい解説

戸令
こりょう

令の篇目(へんもく)の一つ。地方行政の組織と民の守るべき礼の秩序(家族道徳)を定めたもの。浄御原(きよみはら)令にはすでに戸令が存在したが、近江(おうみ)令に戸令もしくはこれに相当する篇目があったかどうかについては、近江令存否を含めて議論のあるところである。現存する養老令によると45条よりなり、郡・里・戸と坊の組織、その長の職掌人民の年齢・健康状態による課税基準の設定、逃亡者の取扱い、分家移住、戸籍法、財産相続法、身分法、国・郡司の教化政策などが規定されている。

[平田耿二]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「戸令」の解説

戸令
こりょう

大宝・養老令の編目の一つ。養老令では第8編で全45条。戸およびこれをもとにした行政組織の編成と把握,礼の基礎である家の秩序に関する婚姻良賤などについて規定する。戸令が浄御原(きよみはら)令にあったことは確実だが,近江令については令そのものの存否を含めて議論がある。中国の戸令は学令・選挙(貢士)令の前におかれ,官人の出身法の前提であるのに対し,日本では戸令の後に田令賦役令が続き,戸令は民政一環と考えられた。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の戸令の言及

【飛鳥浄御原令】より

…しかしすべて散逸して,今日に伝わらない。701年(大宝1)に制定・施行された大宝令はこの令に準拠して撰定されたといわれるから,大宝令および大宝令を修訂した養老令(718年ころ撰定,757年施行,大部分が現存)に収める30編の編目の多くは,飛鳥浄御原令にも存したと推定されるが,確認できるものとしては,〈戸令〉(国家が人民をどのように把握するかということや,身分制などについての条文を収めた編目)と〈考仕令〉(官吏の登用と勤務成績審査についての条文を収めた編目)の二つがあるにすぎない。条文の復元も試みられているが,いまだ全容が明らかにされているとはいいがたい。…

※「戸令」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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