投射(読み)トウシャ(その他表記)projection

翻訳|projection

デジタル大辞泉 「投射」の意味・読み・例文・類語

とう‐しゃ【投射】

[名](スル)
光線や影などを投げかけること。「照明舞台投射する」
入射にゅうしゃ」に同じ。
投影とうえい4
[類語]照射照らす照明投光投影

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精選版 日本国語大辞典 「投射」の意味・読み・例文・類語

とう‐しゃ【投射】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 光などをなげかけること。
    1. [初出の実例]「平行の光線凹鏡に投射するときは、鏡面之を反射して」(出典:改正増補物理階梯(1876)〈片山淳吉〉中)
  3. 光の像や影などをスクリーンなどにうつし出すこと。投影。
    1. [初出の実例]「本を読んでゐても、そのペエジと目との間に、此記念が投射(トウシャ)せられて」(出典:青年(1910‐11)〈森鴎外〉二三)
  4. ( [英語] projection の訳語 ) 心理学で、感覚の原因となる対象の位置を外部に想定すること、または、自分のもっている認知や感情を外的な事物に託して表明すること。投影。
    1. [初出の実例]「ひととき全体の人間がひとつの焦点に向って体をむけ精神を投射してゐたが」(出典:冬の宿(1936)〈阿部知二〉一四)

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改訂新版 世界大百科事典 「投射」の意味・わかりやすい解説

投射 (とうしゃ)
projection

心理学,精神医学の用語。無意識の作用による自我防衛機制一つ。投影ともいう。自分自身の資質欲求,感情等を認められない,あるいは認めたくないときに,それらのものが自分のものではなく,他の人や物にあるかのように感じとる作用。例えば,ある人に対し,敵意なり,逆に恋愛感情なりをもっていて,そのような自分の気持ちを認めたくないとき,その敵意や恋愛の感情は自己の中では抑圧され,相手に投射されて,あたかも相手が自分を憎んでいる,あるいは愛していると感じるメカニズムである。疾病においては,パラノイア恐怖症成立のメカニズムとして説明できる。人の視線を恐ろしいものと感じとる正視恐怖の裏には,周囲の世界に対する自分自身の攻撃性の投射をみることができる。このような投射は,日常の心理機制のなかにも多くみられ,周囲の情報をゆがめて受けとる原因になっている。自分の欠点を他人の中に見いだしやすいというのも投射機制といえよう。このような投射から自由になり,事実を正しくあるがままに見られるようになるためには,自己の側にある不快な感情や欲求,資質に対して自由になることが必要であろう。人間としてさまざまな弱点があっても,それを意識化することで健康な行動も可能になる。
防衛機制
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「投射」の意味・わかりやすい解説

投射
とうしゃ
projection

(1) 神経生理学的には,感覚器官ないしは低次の中枢よりくるそれぞれの神経インパルス大脳皮質において空間的に別々の領域 (投射領野) で受容すること。 (2) 刺激エネルギーが作用している感覚器官の受容面に当該刺激が存在すると感じられるのではなく,むしろその刺激エネルギーの発生源である外部の物体の位置にそれが存在するように感じられる現象のこと。通常,視覚,聴覚において生じるが,触覚では生じない。離心的投射ともいう。 (3) 他人も自分の態度,感情などと同じものをもつと決めてかかる傾向。子供によくみられる。また自分自身承認しがたい考え,感情や,満たしえない欲求をもっている場合に,それを他人に帰してしまうような無意識的な心の働きのこと。精神分析でいう防衛機制の一つで同一視の一つの型。 (4) 刺激対象を知覚する際に,個体の興味,欲求,期待などの影響を受けてそれにそうように知覚が生じること。投影ともいう。パーソナリティ検査における投影法はこの働きを利用したもの。

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百科事典マイペディア 「投射」の意味・わかりやすい解説

投射【とうしゃ】

精神分析理論の一概念。自我の防衛機制の一つで,自分の全人格に受け入れがたい自己の衝動や感情を外部の対象に帰する機制をいう。病的な投射は恐怖症統合失調症精神分裂病)の妄想(もうそう)等によくみられる。

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普及版 字通 「投射」の読み・字形・画数・意味

【投射】とうしや

利を求める。

字通「投」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の投射の言及

【感覚】より

…(2)感覚の空間的特性 感覚は大脳皮質感覚野の興奮に起因する現象であるが,このときわれわれは感覚刺激が外界の,あるいは身体の一定の場所に与えられたものと判断する。これを感覚の投射projectionという。感覚のこの性質によって刺激の位置および部位を定めることができる。…

【防衛機制】より

… 防衛機制にはさまざまなものがあるが,どの防衛機制をもっぱら優先的に用いるかによって,個人の性格も違ってくるし,防衛機制が破綻したときに(防衛機制はもともと不合理なものだから,成功したとしても一時逃れだが)生じる精神疾患の種類も違ってくる。たとえば〈抑圧〉とヒステリー,〈反動形成〉および〈分離(隔離)isolation〉と強迫神経症,〈投射(投影)〉とパラノイアは関係が深いといわれる。防衛機制のもっとも基本的なものは,自我を脅かすふつごうな観念や感情を無意識へと追いやる〈抑圧〉であるが,抑圧したからといってそれらの観念や感情は消滅しないので,さらにいろいろと防衛機制が必要となる。…

※「投射」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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