抱・懐・擁(読み)いだく

精選版 日本国語大辞典 「抱・懐・擁」の意味・読み・例文・類語

いだ・く【抱・懐・擁】

〘他カ五(四)〙
両腕にかかえて持つ。だく。うだく。
書紀(720)履中即位前(図書寮本訓)「大前宿禰、太子を抱(イダキ)まつりて馬に乗せまつれりといふ」
※土左(935頃)承平五年二月九日「ひとみな〈略〉こをいだきつつおりのりす」
② 中に包み込むようにする。擁する。
※書紀(720)欽明五年三月(寛文版訓)「任那を擁(イダキ)(まも)ること、懈(おこた)り息(やす)むこと無し」
③ 心の中に、ある考えや感情を持つ。
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「慕ふこと異にして、荒れたることを懐(イダ)(〈別訓〉ウダ)けば」
海道記(1223頃)萱津より矢矧「泣て騒人の恨をいだきけんも」
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一「吾輩は少なからず恐れを抱いた」
[語誌](1)同意語の「むだく」「うだく」「いだく」「だく」の先後関係は、「むだく」が奈良時代から平安初期、「うだく」が平安初期から鎌倉時代頃、「いだく」が平安初期から現代、「だく」が平安中期から現代、という順になる。
(2)ダクが①の意味で勢力を拡大していくのに伴って、イダクは次第に③の意味に限定されるようになり、現在に至る。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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