押手・印(読み)おして

精選版 日本国語大辞典 「押手・印」の意味・読み・例文・類語

おし‐て【押手・印】

〘名〙 (「おしで」とも)
① 古く、印のこと。天皇御璽、太政官印など。
書紀(720)持統六年九月(北野本鎌倉初期訓)「神の宝書(ふみ)四巻、鑰(かぎ)九箇、木の印(オシテ)一箇を上ぐ」
② 花押を印に刻んだ物。花押を書くべき所に花押状の印をおすことは中世に始まり近世に至って大名の間に広く行なわれた。
※人情本・英対暖語(1838)序「花押(オシデ)をしるすものは、東都台下の好男子」
③ 尊重すべき証拠、宝物の類。
読本・椿説弓張月(1807‐11)続「琉球二顆(ふたつ)の珠は〈略〉国家重宝たり。しかるを寧王女その一顆(ひとつ)を失ひぬれば、今より後何をもて位を伝る璽(オシテ)とせん」
④ (弓を射る時弓柄をもって前に押し出すところから) 射術で左手のこと。押方(おしかた)。ゆんで。⇔引手(ひきで)
※夫木(1310頃)二〇「あづさ弓ひきての山のほととぎす雲を宿とやおしているらん〈藤原基家〉」
琵琶、琴、箏の弾き方の一種。左手で弦を押え右手で弾く法。
源氏(1001‐14頃)紅梅「琵琶はおしてしづやかなるをよきにするものなるに」
⑥ 無理に自分の考えや望みを通そうとすること。押し。→押手を強く
⑦ 押す人。
浮世草子・風流曲三味線(1706)四「印判に替りはなけれど押手(オシテ)行跡変る故に」
⑧ (推手) 推薦する人。
[語誌]古来「印・璽」を訓じて「おして」あるいは「しるし」と称し、印章をさす和語として、その形式にかかわらず用いられた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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