デジタル大辞泉
「招」の意味・読み・例文・類語
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まねき【招】
〘名〙 (動詞「まねく(招)」の連用形の名詞化)
① 呼んでそばへ近寄らせること。また、客として呼ぶこと。招待。
※俳諧・奥の
細道(1693‐94頃)旅立「道祖神のまねきにあひて」
② あることがらの起きるもととなるもの。あることがらを招く原因。
※文明本節用集(室町中)「逆者乱之招 マネキナリ」
③
立烏帽子・
折烏帽子の類の正面のくぼみの上の部分の名。立烏帽子では峰の前方の突き出た所、折烏帽子では正面の三角形の部分をいう。
※四座役者目録(1646‐53)下「ゑぼうしまねきの裏を
金銀の箔を押し」
④
近世の旗や
指物の棹
(さお)の頂辺につける
小旗。江戸時代、劇場の櫓
(やぐら)にも立てた。また、集団行動の際の
標識の小旗をいう。
※三体詩絶句鈔(1620)三「麾は旗のさきにつけたる、マネキぞ」
※滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)上「
道成寺や七変化などの時、切抜にして
やぐら下へ出すのが釣看板ともまねきとも云やす」
⑥ 江戸時代の劇場の
木戸口で、大勢そろって扇を開き、「ありゃありゃ」と呼びながら観客を招いたこと。また、その人々。〔
戯場訓蒙図彙(1803)〕
⑦
文楽人形の型の一つ。
右手の掌を
手前に向けて目の高さにかざし、その掌を
向こうに返しながら押える形に下ろすもので、招くときのほかに、ほめるとか励ますときの
身ぶりとする。
⑧ 船から他船または
陸地に対し、
合図のため掲げる標識。近世の
船方では、
漂流船などが
救助を求めるために掲げる標識をいい、適宜手元の筵、布、笠などを棹の
先端につけて立てた。
※
漂流記(1863)上「今又船を捨てるに忍びずや思ひけん、招の印も揚げず」
まね・く【招】
〘他カ五(四)〙 (近世以降「まねぐ」とも)
① 手や袖を動かすなどの合図をして、近くに来るようにうながす。手招きして呼ぶ。また、合図などのために手や袖を振り動かす。手まねで知らせる。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)三「千の酒に
れる人を招
(まネキ)誘して飲興し」
※
古今(905‐914)秋上・二四三「秋の野の草はたもとか花すすきほにいでてまねく袖とみゆらん〈在原棟梁〉」
②
口頭または
使者、
書状などによって、呼んで自宅など、近くに来させる。呼び寄せる。呼ぶ。招待する。
※
平家(13C前)一一「大納言猶命をしうやおもはれけん、子息讚岐中将をまねひて」
③ それだけの理由があって、結果を身にこうむる。身に受ける。
※書紀(720)斉明六年七月(北野本訓)「
賢良(さかしひと)を誅し殺すに由ての故に、斯の禍を召
(マネケ)り」
④ (比喩的に) 身近にもたらす。
※海道記(1223頃)序「手の中に扇あれば涼を招くに㝡やすし」
⑤ やって来てしばらく滞在してある仕事をしてくれるよう、礼をつくして頼む。招聘(しょうへい)する。
お・く をく【招】
〘他カ四〙 (後世「おぐ」とも)
① まねきよせる。よびよせる。
※古事記(712)上「是に、其の遠岐(ヲキ)し八尺(やさか)の勾璁(まがたま)・鏡と草那芸剣と、亦常世思金神・手力男神・天石門別神とを副へ賜ひて」
② 鷹言葉で、餌などで鷹をまねきよせる。
※龍山公鷹百首(1589)「置かふは。鷹を手はなち。餌を見せておきたつる事也。鷹よぶとはいはず。おくと云也」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報