家具製造の職人。17世紀に戸障子師(建具師)とともに家大工から分化した。指物(差物)の製品には大物・小物があり、工程も多く、それぞれに得手(えて)・不得手があるという。大物の箪笥(たんす)には専門職人もできた。大工と違って居職(いじょく)で、仕事は細かい。道具のうち、鉋(かんな)は建具師と同じく主要なもので、自分でこれをつくることもあった。板材を決めて、荒・中・仕上げと鉋を取り替えて削り、最後に表面を椋葉(むくのは)や木賊(とくさ)で磨いた。19世紀後半になって、洋家具が取り入れられると、伝統的な技術は洋家具指物師へと分化した。「指す」とは物差しで板の寸法を測って蓋(ふた)や引き出しのある箱物をつくることをいう。
[遠藤元男]
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…板材を組み立てて木製品をつくることの総称であるが,古くは家具,調度類をつくることをいい,地方によっては建具製作のことをいった。また指物をつくる工人を指物師と称した。指物は木工を構造的にするもので,木工芸のうちもっとも多用される手法であり,日本において極度の発達をみた。…
… 一般に大工carpenterは建物の構造部分を担当し,丸太や角材を積んだ壁,骨組構造の支柱や外壁,間仕切壁,屋根の小屋組みなどをつくるので,大工仕事を荒木工事rough carpentry(軸組工事)ともいう。これに対し,より精密で見栄えのよさを必要とする木工事は指物(さしもの)工事joinery(造作工事)と呼び,指物師joinerは壁板,壁パネル,床,天井,扉,窓,階段,家具,備品を担当した。このように日本の大工,建具職,指物師とは仕事の分担がかなり異なっている。…
※「指物師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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