デジタル大辞泉
「推敲」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
すい‐こう ‥カウ【推敲】
〘名〙 (「苕渓漁隠叢話」の「緗素雑記曰、
賈島於
二京師
一騎
レ驢得
レ句。鳥宿池辺樹、僧敲月下門。始欲
レ著
二推字
一。又欲
レ著
二敲字
一、錬
レ之未
レ定。〈略〉引
レ手作
二敲推勢
一。時
韓愈吏部権京兆。島不
レ覚衝至
二第三節
一、左右擁至
二尹前
一。島具対
レ所
レ得。詩句云云。韓立
レ馬良久謂
レ島曰、作
二敲字
一佳矣。遂与並
レ轡而帰」による語。唐の詩人賈島が「僧推月下門」の句を作ったが、「推
(おす)」を「敲
(たたく)」に改めた方がよいかどうかに苦慮して、韓愈に問い「敲」に決したという故事から) 詩や文章を作るにあたって、その字句や表現をよく練ったり練り直したりすること。
※鈍鉄集(1331頃)春事「毎レ逢二春事一心先動。句裏推敲吟未レ休」
※荊口宛芭蕉書簡‐元祿六年(1693)四月二九日「
ふたつの作いづれにやと推稿難
レ定処」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
推敲
詩や文章を作る際、字句や表現を何度も練り直すこと。
[使用例] 二三首作りはしましたが、どうも未だ推敲が足りません[末広鉄腸*雪中梅|1886]
[使用例] 大学ノートに走り書きしたのを推敲しながら原稿用紙に浄書して三百枚、これにボール紙で表紙をつけ[加賀乙彦*湿原|1986]
[由来] 「唐詩紀事―四〇」に載っている話から。唐王朝も中期にさしかかった九世紀の初めごろ、科挙(官吏採用試験)を受けるために都にやってきた、賈島という詩人がいました。彼はロバに乗っているときに詩を作ろうとして、「僧は推す、月下の門」という句を思いつきましたが、「推す」のままがよいか「敲く」と直したほうがよいか、決まりません。推す動作をしたり敲く動作をしたりしてみましたが、結論には至らず。悩むあまり、都の長官、韓愈の馬に衝突してしまいました。賈島がその理由を詳しく述べたところ、韓愈はしばらく考えて「敲く」がよいと答え、二人は並んで進みながら詩を論じ合ったのでした。
[解説] ❶賈島は、非常に苦労をして一つの詩を作り上げることで知られた詩人。ある句ができあがるまでに三年もかかり、できあがったときには涙を流した、という話もあります。❷韓愈は、文学史上に大きな足跡を残す、当時の文壇の大御所。彼が「敲く」がよいと言ったのは、その音響効果を意識してのことでしょう。動作についてばかり考えていた賈島からすれば、目を開かれる思いがしたに違いありません。❸だとすれば、この故事成語には、よい文章を書くためには発想の転換も必要だ、という教訓も含まれている、といえましょう。
出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報
普及版 字通
「推敲」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報