摂する(読み)セッスル

デジタル大辞泉 「摂する」の意味・読み・例文・類語

せっ・する【摂する】

[動サ変][文]せっ・す[サ変]
職務などを代わって行う。代理をする。また、兼務する。
「幼稚なる故松平確堂に命じて事を―・せしむるの趣き」〈染崎延房・近世紀聞〉
取り入れる。摂取する。
「これを左の数言に―・することを得」〈河上肇貧乏物語
もてなす。接待する。
「けしからず一夜―・して候ひしよ」〈謡・鵜飼

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「摂する」の意味・読み・例文・類語

せっ‐・する【摂】

  1. 〘 他動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]せっ・す 〘 他動詞 サ行変 〙
  2. 公的な職務を、それを行なうべき人に代わって行なう。代理する。また、いくつかの職務を一人が行なう。兼務する。しょうす。
    1. [初出の実例]「周成王幼而即位。叔父周公旦摂政。是今摂政之義也」(出典:職原鈔(1340)上)
    2. 「田安亀之助をもて徳川の本家を嗣(つ)がしむ然(さ)れども幼稚なる故松平確堂に命じて事を摂(セッ)せしむる」(出典:近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉九)
  3. 学問や思想を学び習って自分のものにする。また、身体の栄養となるものをとりいれる。摂取する。しょうす。
    1. [初出の実例]「紀伝・明経・明法の三道に詩・書・礼を摂すべきにこそ」(出典:神皇正統記(1339‐43)中)
    2. 「称名の声の裏(うち)には散乱の意を摂(セッ)し、禅那の行の暇には吟咏のおもひに耽り悠々自ら楽むに」(出典:二日物語(1892‐1901)〈幸田露伴〉此一日)
  4. 客をもてなす。接待する。
    1. [初出の実例]「我が家に連れて帰り、けしからず一夜摂して候ひしよ」(出典:謡曲・鵜飼(1430頃))
  5. 中に含める。収める。同一範疇に入れる。
    1. [初出の実例]「天台は四教を立て、法相を別教に摂す」(出典:梵舜本沙石集(1283)四)

しょう‐・するセフ‥【摂】

  1. 〘 他動詞 サ行変 〙
    [ 文語形 ]せふ・す 〘 他動詞 サ行変 〙 ( 「しょう」は「摂」の正音 )
  2. 兼ねる。あわせ持つ。せっする。
    1. [初出の実例]「普(あまね)く一切法界等の如来の力〈略〉一切如来の神変遊戯(じんべんゆけ)を摂し給ふ」(出典:今昔物語集(1120頃か)三)
  3. とり入れる。摂取する。せっする。
    1. [初出の実例]「逆悪摂すと信知して 煩悩菩提体無二と すみやかにとくさとらしむ」(出典:三帖和讚(1248‐60頃)高僧)
  4. 正す。ととのえる。
    1. [初出の実例]「善の標準を以て快楽の矛盾を摂(セフ)する」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春)

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