支那(読み)シナ(その他表記)Zhī nà

デジタル大辞泉 「支那」の意味・読み・例文・類語

しな【支那】

王朝名のしん西方に伝わりそれが変化したものという》外国人中国に対する古い呼び名。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「支那」の意味・読み・例文・類語

しな【支那】

  1. 中国に対してかつて日本人が用いた呼称。王朝名の秦(しん)が音変化して西方に伝わり、それを音訳したものといわれる。日本では江戸中期から次第に広まり、第二次世界大戦末まで用いられた。

支那の語誌

→「しんたん(震旦)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「支那」の意味・わかりやすい解説

支那 (しな)
Zhī nà

外国人の中国に対する呼称。中国人も清末に満州王朝への臣属を拒否する意志をこめて用いたことがある。語源についてはふつう,秦の名が音変化して西方に伝わり,とくに南方海路を通じて古代インドに入ってチーナスターナCīnasthāna(チンの土地)とサンスクリット表記されたものが仏典漢訳の際中国に逆輸入されて〈支那〉と書かれたといわれる。唐初の玄奘も中央アジア,インドで自国が支那と呼ばれたことを伝えている。日本にも仏典を通じて伝えられ,空海の《性霊集》にすでに見えるが,新井白石の《西洋紀聞》など江戸時代中・後期ころからしだいに普及し,明治になって英語のChina,フランス語のChineなどとの対応から,清国や中華民国の国号とは別個の広義の地域名称として通行するにいたった。しかし,中華民国成立後,日本政府がことさら政治的意味をこめて使い,日本の大陸侵略と結びついて蔑称的性格が強められた結果,第2次大戦後は使用が避けられるようになった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「支那」の意味・わかりやすい解説

支那【しな】

中国の異称。現在の中国本土をさす。(しん)の音に由来するといわれる。従来,日本では中国を唐と称したが,仏典にみえる支那・至那・脂那などがヨーロッパでの呼称シナ,チーナなどに似ているため,新井白石や蘭学者が使用し始めた。なお支那という言葉自体に蔑視の意味はないが,日中戦争などで侮蔑的に使用されたりした経緯から中国人の反発を受け,第2次大戦後はこの使用を避けることが多い。こうしたことから,中国では〈東支那海〉〈南支那海〉などの呼称は使用せず,それぞれ〈東海〉〈南海〉と呼んでいる。
→関連項目震旦中国

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「支那」の意味・わかりやすい解説

支那
しな

中国本部地域の別称。その語源については明らかでないが、一般には紀元前3世紀末、中国を統一した秦(しん)王朝の秦の音がチーナChinaとかチンThinとして西方に伝えられたことによるという。それが仏典に記され、さらに漢訳されて支那となった。この語はまた脂那あるいは震旦(しんたん)(チニスターナ。支那人の住地の意)などと音訳されている。したがって支那は外来語であり、英語のチャイナChina、フランス語のシーヌChineなどもそれから出た語である。なお、日本のアジア地域への侵略過程で、侵略を正当化する理由の一つとしてその地域の住民を劣等視したことなどにより、支那ということばに蔑視(べっし)の意味はないが、日本人が使用すると蔑称的性格をもち、また中国人も侮蔑(ぶべつ)感を強くもつため、第二次大戦後は使用を避ける人が多くなっている。

[宇都木章]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

旺文社世界史事典 三訂版 「支那」の解説

支那
しな

かつて外国人が中国を呼んだ名称
前3世紀末期,この地域を統一した秦の名が,その国威の隆盛に伴って四辺に広まり,秦の滅亡後もその名は西方に伝わったという。それがなまってSina, Thinaなどとなり,近代のChina(英語)などとなった。インドでもCinaと呼び,これが漢語に翻訳されて「支那」「斯那」などと記された。日本では江戸時代に新井白石が使用して以来,第二次世界大戦まで中国の一般的な呼称として使用された。日本の中国侵略と関連して蔑称的な性格をもったため,第二次世界大戦後は使用を避けることが多くなった。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

普及版 字通 「支那」の読み・字形・画数・意味

【支那】しな

中国。

字通「支」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の支那の言及

【シルクロード】より

…ドイツ語のザイデンシュトラーセンSeidenstrassen(複数形〈絹の諸道〉)に基づく英語訳名。ドイツ語名は,ドイツの地理学者F.vonリヒトホーフェンの大著《支那China》第1巻(1877)に用いられ,以後これを受け継いだドイツの東洋学者A.ヘルマンの著書《シナ・シリア間の古代絹街道Die alten Seidenstrassen zwischen China und Syrien》(1910)などによって普及。古来,これらの交通路を利用して西方に運ばれた中国商品の代表的なものが絹であったことから付けられた名称である。…

【清】より

…中国人留日学生の総数は1905年に8000人を数えたが,これは世界の留学史上からみても特筆に値する規模である。しかし,まさにこの時期に日本人一般の中国認識も一変し,侮蔑をこめた〈支那〉の呼称が定着した。1901年,〈支那を保全す。…

※「支那」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android