改訂新版 世界大百科事典 「政体循環論」の意味・わかりやすい解説
政体循環論 (せいたいじゅんかんろん)
国家の政体は歴史的に循環するという理論。ギリシアの歴史家ポリュビオスが彼の著書《歴史》第6巻でローマの政体を論じたときに提起した説。すなわち一員政(君主政)の政体はやがて悪化して暴君政となり,これを是正するために貴族政が成立するが,それも少数者が権力を濫用する寡頭政に陥る。これを変革して民主政が樹立されるが,それもやがて愚論百出して収拾できない衆愚政に転落する。これを克服するためには優秀な個人の統治が要望され,こうして最初の一員政(君主政)が回復されるとともに,また同様な循環をくり返して停止するところを知らないと説く。この理論はプラトンやアリストテレスの政治論に萌芽を見いだすが,ポリュビオスがそれを完成し,現実の世界史に適用した点に特色がある。この理論はそのままには受容されないにしても,後代の政治論に影響を与えた。
執筆者:秀村 欣二
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