敷金(読み)シキキン

デジタル大辞泉 「敷金」の意味・読み・例文・類語

しき‐きん【敷金】

不動産、特に家屋の賃貸借にさいして賃料などの債務の担保にする目的で、賃借人賃貸人に預けておく保証金。しきがね。
江戸時代、市場の取引の手付金
江戸時代、問屋が生産者または小売店に前渡しした貸付金。仕入れ銀。
婚姻などの際の持参金。しきがね。

しき‐がね【敷金/敷銀】

敷金しききん」に同じ。
「―にして物を売るとも」〈浮・永代蔵・五〉
「入むこの―にて此の家を継がすべき事をたくみ」〈浮・懐硯・五〉

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精選版 日本国語大辞典 「敷金」の意味・読み・例文・類語

しき‐きん【敷金】

〘名〙
① 江戸時代、市場取引での証拠金・手付金。敷銀。しきがね。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一「英吉利の商官が、前びろから敷金(シキキン)をして上物は他国の者の手に渡さずに引あげてしまった」
② 江戸時代、問屋が生産者・配給者に渡した前貸金。仕入金
③ 倉庫の保管料。倉敷料。
謝礼の金。礼金
浄瑠璃朝長(1637)一「みかどゑいらんましまして、しき金百両下され候へば」
⑤ 不動産、特に家屋の貸借の際に、借主が契約上の債務を担保する目的であらかじめ貸主に差し出す金銭。家賃の滞納などがなく、賃貸借が無事終了した際には、貸主はこれを返還しなければならない。しきがね。
※うつせみ(1895)〈樋口一葉〉一「敷金(シキキン)三月分」
⑥ 婚姻の際の持参金。敷銀。しきがね。
談義本・艷道通鑑(1715)一「敷金持て来る女房は夫を尻に敷くから」

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改訂新版 世界大百科事典 「敷金」の意味・わかりやすい解説

敷金 (しききん)

不動産の賃貸借契約を締結する際に,賃借人から賃貸人に授受される金員で,賃借人の賃料支払債務を担保する意味をもつ。額は賃料の2ヵ月分とか6ヵ月分というかたちが多い。古くから行われているもので民法にも規定がある(316条,619条2項)。賃貸借契約終了時に,賃料債務の延滞未払分がなければ全額が返還され,未払分があれば,それに充当し,その残額が返還される。未払賃料に充当するための預り金であるが,賃貸人は,敷金を消費することができ,計算上返還分があれば,自己の金員から返還する。未払分に充当するか否かは,賃貸人の権限に属し,賃借人から,充当を請求することはできない。また,敷金があっても,賃料の未払分があれば,債務不履行として,賃貸人は契約を解除することができる。

 当初の賃貸借契約当事者がその後交代した場合,敷金はどうなるかが問題になる。賃貸人が交代した場合,新旧賃貸人間で敷金が引き継がれれば問題はないが,新賃貸人が引き継がなかった場合,賃借人は契約終了の際,新賃貸人に敷金の返還を求められるかどうかが争われ,判例は,敷金の引継ぎがあったかどうかと関係なく,新賃貸人は敷金返還義務を負うとした。

 明渡しとの関係で,敷金の返還請求権の発生時期が争いになる。敷金返還請求権は,賃貸借終了時に発生し明渡しと同時履行の関係にたつのか,それとも明渡しをしてはじめて返還請求権が発生するのかである。明渡しと同時履行の関係に立つとしたほうが敷金の返還を確保しうることになるが,判例は明渡しをしてはじめて返還請求ができるとしている。

 なお,ビルディングのフロアーの賃貸借では,権利金と敷金の中間的性格をもつ保証金が授受されている。保証金は返還されるが,償却と称して一定割合を賃貸人が取得する点では権利金に近い。賃貸人の交代の際,引き継がれるかどうかをめぐり,敷金と同じような争いがあり,承継されないとするのが判例である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「敷金」の意味・わかりやすい解説

敷金
しききん

土地,建物など不動産の賃貸契約の際に賃料支払いなど借主の債務を担保するため,借主から貸主に対して交付される金銭をいう。その性質については,民法にはあまり明確な規定がないが,一般には,次のような効果が認められる。第1に,契約期間中に債務不履行があったとき,敷金が当然債務の支払いに充当されるのではなく,貸主は債務の履行を求めることができる。第2に,契約が終了したときは債務不履行があればその額を除いて,なければ敷金の全額を返還しなければならない。第3に,契約期間中に貸主が交代しても,敷金は新貸主に引継がれる。したがって借主は契約終了時の新貸主にその返還を求めることができる。

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百科事典マイペディア 「敷金」の意味・わかりやすい解説

敷金【しききん】

不動産,特に家屋の賃貸借に際し,賃料その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭。その法律的性質は,賃貸借終了の際,賃借人に債務不履行のあるときは当然にその弁済に充当されて残額を,債務不履行がなければ全額を返還するという停止条件付返還債務を伴う金銭所有権の移転である。→権利金
→関連項目地代家賃統制令

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「敷金」の意味・わかりやすい解説

敷金
しききん

家屋や土地の賃貸借に際して賃料の支払いやその他の賃貸借契約上の債務(たとえば借家人がその借家に損害をかけた場合の損害賠償債務)を担保する目的で借り主から貸し主に交付される金銭。この金額は、当事者間の契約によって定まり、とくに基準はないが、賃料月額の整数倍の金額とすることが多い。民法は、敷金の性質についてはなにも定めていないが、契約終了の際に借り主に債務不履行があればその額が当然に減額され、債務不履行がなければ全額が借り主に返還されるものと解されている。

[竹内俊雄]

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不動産用語辞典 「敷金」の解説

敷金

建物の賃借人が、賃料その他賃貸借契約上の債務を担保するため、貸主に交付する金銭をいいます。
このほか権利金、保証金等も授受されることがあり、その性格および内容は当事者の合意によることになりますが、敷金は契約が終了して、建物等を明け渡した後に、未払賃料等があればこれを控除したうえで返還されます。
賃借人は契約継続中に、敷金によって不払賃料に充当させることはできません。
敷金には利息が付されません。建物等の所有権(賃貸人の地位)が移転したときは、新所有者に引き継がれます。

出典 不動産売買サイト【住友不動産販売】不動産用語辞典について 情報

家とインテリアの用語がわかる辞典 「敷金」の解説

しききん【敷金】

家屋などの不動産の賃貸借で、賃借人が賃料などの債務の担保として賃貸人に渡す金銭。契約解除の際に、賃借人が賃貸人にかけた損害があればその分を差し引き賃借人に返還される。

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