生体のある断面の構造を画像として得る検査法。従来のX線断層撮影は、X線管とフィルムを一定の幾何学的関係で移動させながらX線像を得ることによって、目的とする断面以外の像をぼかしてしまう方法である。X線管の移動方向に生じるぼけを抑えるために多方向にX線管を移動させる多軌道断層撮影がくふうされ、おもな軌道には直線、円、楕円(だえん)、スパイラル、ハイポサイクロイドがあった。従来頭蓋骨(とうがいこつ)内のトルコ鞍(あん)、内耳道、側頭骨や副鼻腔(びくう)をはじめ、肺門部を中心とした胸部の精密検査として広く施行されていたが、X線CT(computed tomography)の普及に伴いまったく行われていない。
現在でも行われているものとして、胆汁(たんじゅう)中に排泄(はいせつ)される水溶性ヨード造影剤静注後に総胆管と胆嚢(たんのう)管の描出を目的として施行するDIC(drip infusion cholangiography)や骨腫瘍(しゅよう)に対する断層撮影があげられる。X線CT以外にも磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging:MRI)や超音波検査も広義には断層撮影に含まれる。また核医学でも生体内に投与した放射線同位元素から放出されるγ(ガンマ)線を多方向から検出して断層像を得るSPECT(スペクト)(single photon emission CT)や陽電子放出核種である11C、13N、15O、18Fを利用して脳、心臓さらに腫瘍の代謝を断像画像として捉えるPET(positron emission tomography)が臨床的に応用されている。
[大友 邦 2021年8月20日]
X線検査における一手法。普通のX線撮影では種々の構造が重積して1枚の画像を形成するが,断層撮影は,目的とする身体のある深さの断面のみを明りょうなX線像として写し出し,他の部分をぼけ像とするもので,1921年フランスのボカジュA.E.M.Bocageが考案した。これにより,病変部の状態と周囲との関係がより明確にとらえられるようになった。この断層撮影は,当初,肺結核空洞の診断に広く用いられたが,現在では,胸部疾患だけでなく,骨部,頭部,その他の臓器の検査にも広く用いられている。また,検査部位によっては造影剤を併用することもある。X線管の移動方法により,直線断層撮影,多軌道断層撮影などの種類がある。また,人体の横断面を撮影する方法として,回転横断撮影やコンピューターを利用したコンピューター断層撮影computed tomography(略称CT)などもある。
→CT検査
執筆者:蜂屋 順一+金場 敏憲
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…近年では特殊撮影に含めないこともある。(3)断層撮影法 X線像は透過像であるため,種々の陰影が重なって1枚の画像を構成している。この中から不必要な陰影をぼかして消去し,目的とする断面のみを描出する方法である。…
※「断層撮影」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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