新宗教(読み)シンシュウキョウ

デジタル大辞泉 「新宗教」の意味・読み・例文・類語

しん‐しゅうきょう〔‐シュウケウ〕【新宗教】

既成宗教に対し、新しく興った宗教。多く教祖を有し、現世における救いを説くものが多い。新興宗教
特に、幕末・維新期以降発生した多くの宗教集団をさす。

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改訂新版 世界大百科事典 「新宗教」の意味・わかりやすい解説

新宗教 (しんしゅうきょう)

新興宗教ともいう。明治維新以後に成立し発展した一連の宗教の総称で,幕末に成立した諸宗教を含める場合もある。近代の国家神道体制下では,新派神道,仏教キリスト教は事実上の公認宗教であったが,新しく成立した習合神道系,仏教系の諸宗教は非公認ないし公認宗教に所属する準公認の宗教団体とされた。これらの新宗教は新興類似宗教,擬似宗教などとよばれ,内務省の監視と干渉を受けて,しばしば禁圧された。新宗教の先駆は幕末維新期の創唱宗教と仏教の在家宗教であり,如来教黒住教天理教金光教,富士信仰系の丸山教法華神道の蓮門教,法華系の本山仏立宗などがその代表的な存在である。これらの諸宗教は,封建社会が崩壊し近代社会の形成へと向かう動乱期の民衆の不安と欲求を反映して,現世中心,人間本位の救済の教義を掲げ,1880年代を中心に全国的に発展して,新宗教の教義面,組織面の源流となった。明治中期には大本教が成立し,第1次世界大戦の時期に世の立替え,立直しをよびかけて,めざましく進出した。大正末期から昭和初期の恐慌下では,大本教系の成長の家,天理教系の〈ほんみち〉,徳光教とそれを継承する〈ひとのみち〉,法華系在家教団の霊友会などが成立し,農民,勤労者,中小経営者家庭婦人などを広範に組織して,活発な布教を展開した。ファシズムの台頭とともに,不敬罪,治安維持法違反等を理由とする新宗教への弾圧が激化し,大本教,〈ほんみち〉,〈ひとのみち〉は解散させられた。太平洋戦争中は,思想統制の強化によって,ほとんどの新宗教は活動を阻まれ,法華系の創価教育学会などが弾圧された。敗戦後,信教の自由が実現し,これまで公認宗教に所属していた新宗教は相次いで独立し,大本教系の世界救世教,〈ひとのみち〉を再建したパーフェクト・リバティーPL教団),霊友会から分立した立正佼成会などが全国的に進出した。講和後は創価学会(もと創価教育学会)が折伏(しゃくぶく)と政治進出を通じて急激に教勢を拡大した。新宗教では現世利益を強調し,神がかりする生神,霊能者の活動が目だつが,新宗教をことさら淫祠邪教視し,低俗とする風潮は,近代天皇制国家の宗教統制政策に起因するもので,客観的な根拠はない。
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百科事典マイペディア 「新宗教」の意味・わかりやすい解説

新宗教【しんしゅうきょう】

新興宗教とも。既成宗教に対して新しく興った宗教の意味であるが,その概念は必ずしも明確でない。歴史的には明治以降の成立が考えられるが,第1次大戦当時盛んとなり多くの教団の源流となった大本教をはじめ,天理教黒住教などを除く見解もある。性格的特徴としては,教祖個人の呪術(じゅじゅつ)的性質やシャーマン的性質をもとにし,病気・貧乏・争いなどの日常的問題を超自然的な力によって解決しようとし,現世利益中心の教義が多い。新しい教説に基づいて教祖や組織者によって形成され,布教活動が盛んに行われる。在家・俗人主義で教職者でも俗人のままである。入信を導いてくれた人を〈親〉などと呼ぶ宗教的親子関係が擬制され,教祖は絶対化・神格化され,権威主義が支配的である場合が多い。教派的には神道と仏教の真言・日蓮宗系のものが多く,現在約600の教団が数えられる。
→関連項目庭野日敬民間信仰迷信

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知恵蔵 「新宗教」の解説

新宗教

かつてマスコミは、新しく興り、既成の宗教に比べていかがわしく、宗教的価値が低いというニュアンスで新興宗教という言葉を使った。これに対して研究者は、中立的な意味で「新宗教」という用語を使用し、現在ではこちらの方が普及している。新宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始された黒住教(くろずみきょう)、天理教、金光教(こんこうきょう)などから、今日のアーレフ(オウム真理教)や法の華三法行までを含む。教団の規模も、20〜30人程度から約500万人と幅があり、教義や儀礼の面でも様々である。特定の教団から分派・独立したものも多く、その系統によって天理教系、大本系、霊友会系、世界救世教系などに分類することができ、組織形態、教義や儀礼などにも、ある程度の類似性がみられる。一般的新宗教は、カリスマ的な教祖によって創始され、神道や仏教など伝統的宗教の要素を基盤として、それらに新しい解釈や要素を付け加えることで成立している。さらに、1970年代後半になると、新しいタイプの新宗教が登場したとの認識から、西山茂(東洋大学教授)によって「新新宗教」という用語が作られた。ただ、どの教団をこう呼ぶのかについては研究者によって様々であり、何をもって新しいとするかの具体的な基準も明確ではない。また、99年には井上順孝(国学院大学教授)が「ハイパー宗教」という用語を使い、グローバル化の中で、伝統的な倫理や規範にとらわれない無国籍な宗教運動が顕著になっていると指摘した。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新宗教」の意味・わかりやすい解説

新宗教
しんしゅうきょう
new religions

一般に社会で認知されている既成の宗教に対し,新しく形成されてくる運動・集団をいう。社会変動期のアノミー状況における庶民の世直し欲求,あるいは欲求不満が,多くはみずからも俗人である教祖のカリスマ的言動を核として,大衆をひきつける運動となる。そのため,伝統や僧職の力で人を導く既成宗教とは異なり,下から発生した目的集団の形をとることが多い。またこのような布教組織が同様な欲求をもつ庶民を集める傾向があるため,特に中下層庶民の「階層的」宗教集団となる傾向がある。教学的には体系化に欠け,庶民の信仰体験に基づく現世利益的な信条を生み出してゆくことになる。

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世界大百科事典(旧版)内の新宗教の言及

【教祖】より

…彼らはしばしば犯罪者または社会的規範からの逸脱者としての烙印を押されたが,やがてその烙印を主体的にうけとめ,アウトサイダーとしての役割に積極的に生きることを通して人々の信頼をかち得ていった。 日本では,仏教の各宗派の開祖はすべて教祖型の人物であるが,幕末維新期以降に形成された新宗教の教祖としては,習合神道系では黒住教の黒住宗忠,天理教の中山みき,金光教の川手文治郎,大本教の出口なお,また法華(日蓮)系では本門仏立宗の長松日扇,近くは霊友会の小谷喜美,立正佼正会の長沼妙佼などがあげられる。これらの教祖の多くはその初期においては病気直しによって信者を獲得し,やがて世直しの主張を前面に押していくという点で共通していた。…

※「新宗教」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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