新造(読み)シンゾウ

デジタル大辞泉 「新造」の意味・読み・例文・類語

しん‐ぞう〔‐ザウ〕【新造】

[名](スル)
新しくつくること。また、そのもの。「貨客船新造する」
武家や富裕な町家の妻女。のち、一般に他人の妻女、特に若妻をいう語。また、広く若い未婚の女性をもいう。しんぞ。→御新造ごしんぞう
「なんでも巫子いちっこの―めが、いっちこちらの端に寝たやうすだ」〈滑・膝栗毛・三〉
江戸時代、遊里で、姉女郎の後見つきで、新しくつとめに出た若い遊女。
[類語]新作新調試作

しん‐ぞ【新造】

しんぞう(新造)」の音変化。→御新造ごしんぞ
馴染なじみでない―が来て」〈花袋田舎教師

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精選版 日本国語大辞典 「新造」の意味・読み・例文・類語

しん‐ぞう‥ザウ【新造・新艘】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 新造 ) 新しくつくること。また、そのもの。
    1. [初出の実例]「新造の院一所、山代の郷の中にあり」(出典:出雲風土記(733)意宇)
    2. [その他の文献]〔書経‐君奭〕
  3. 特に、新しく船をつくること。また、その船。ふつう建造後一年以内の船をいうが、六、七年以内の船をさしていうこともある。しんぞ。
    1. [初出の実例]「Tyrocinium〈略〉Xinzô(シンゾウ) ハジメテ ウミ エ ヲロサルル、または、トカイ スルヲ ユウ」(出典:羅葡日辞書(1595))
  4. 武家の妻女をさしていう語。御新造。しんぞ。
    1. [初出の実例]「新造としより候へば、其身もともに行歩不自由故」(出典:島津家文書‐(慶長一二年)(1607)正月二四日・近衛龍山前久書状)
  5. 町家の、富貴な家の妻女をいう。また、後にはふつう、他人の妻女、特に、新妻や若い女房をいうのに用いられ、転じて、未婚の若い女性のこともいう。御新造。しんぞ。
    1. [初出の実例]「イヤイヤ新造(シンゾウ)より年増がおもしろい」(出典:咄本・聞上手(1773)女の評判)
  6. 江戸時代の遊里語。京坂では、新しくつとめに出た若い遊女をいう。江戸中期以降の吉原では、姉女郎の後見つきで新しくつとめに出た禿(かぶろ)上がりの、自分の部屋をもたない若い遊女をいい、「振袖新造」「留袖新造」「番頭新造」の三つにわかれる。また、岡場所では、年増女郎に対して、年の若い女郎をいう。しんぞっこ。
    1. [初出の実例]「新艘(シンゾウ)禿(かぶろ)なるも、禿ならざるも、傾城となりて初めて出世したる砌(みぎり)をいふ。船をあたらしく造り立たる詞より出たり」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一)
  7. 明治以後、東京の新吉原で、娼妓につきそって身のまわりの世話をした女中。〔現代語大辞典(1932)〕

しん‐ぞ【新造・新艘】

  1. 〘 名詞 〙 「しんぞう(新造)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「しだされた・かぶろあがりの新ぞ様」(出典:雑俳・西国船(1702))

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改訂新版 世界大百科事典 「新造」の意味・わかりやすい解説

新造 (しんぞう)

遊郭用語。〈新艘〉とも書き,なまって〈しんぞ〉という。遊女を舟に見立てたものというが,語源は不明。《あづま物語》(1643)は新しく出た太夫を新造とよんでいるが,後にはかむろ(禿)あがりの,姉女郎の部屋に同居中のものを新造といった。吉原ではかむろが14歳ぐらいになると新造として披露した。このとき歯黒めはするが,まだ振袖を着ていたので〈振袖新造〉といい,姉女郎の名代を勤めたりする見習の遊女であり,修行や人気など時期をみて,袖留をしたうえ部屋を与えて一人前の遊女にした。これとは別に,かむろを経ずに雇われてすぐに新造となるものがあり,この新造は売春をした。また,〈番頭新造〉は袖留をしたまま姉女郎の身辺を世話する役で〈世話新造〉ともいい,京阪ではこれを〈引舟(ひきふね)〉と称した。なお,江戸時代の武家や町家では妻女を御新造(ごしんぞう)とよぶことがあり,またときには結婚前の少女を新造といった。
花魁(おいらん)
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新造」の意味・わかりやすい解説

新造
しんぞう

江戸時代の遊女の一階級で、「しんぞ」ともいう。時代や土地によってその対象は一定しない。寛永(かんえい)(1624~44)ごろには新しく店に出た太夫(たゆう)を新造とよんだが、江戸・吉原では禿(かむろ)の年季を終えて姉女郎についたものを新造といった。吉原の新造は遊女見習いで客をとらせず、作法などを修得すると遊女営業を始めさせた。これを「突出(つきだ)し」といって、衣類などに莫大(ばくだい)な費用をかけた。同じ吉原でも下級遊女屋には新造という下級遊女がおり、また上級遊女の身辺を世話する30歳以上の番頭新造がいた。番頭新造の役をする者を大坂では引舟(ひきふね)と称した。

 なお別に、未婚の少女を新造、新妻あるいは姑(しゅうとめ)のいる妻女を御新造(ごしんぞ)とよんだ。

[原島陽一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新造」の意味・わかりやすい解説

新造
しんぞう

「しんぞ」ともいう。 (1) 嫁入り前の娘,新妻,さらに一般の他家の妻女をいう。 (2) 江戸時代,吉原で御職女郎に付添った若い見習いの遊女。振袖新造,留袖新造,番頭新造の3種があった。禿 (かむろ) が成長して 13~14歳になると新造とし,振袖新造という。さらにやや年をとると袖を留めて留袖新造となり,この2者は姉女郎の左右にはべって遊女としての教育を受けた。番頭新造は,御職女郎にはなれなかった遊女を意味した。

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普及版 字通 「新造」の読み・字形・画数・意味

【新造】しんぞう

新作。

字通「新」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の新造の言及

【新造】より

…遊女を舟に見立てたものというが,語源は不明。《あづま物語》(1643)は新しく出た太夫を新造とよんでいるが,後にはかむろ(禿)あがりの,姉女郎の部屋に同居中のものを新造といった。吉原ではかむろが14歳ぐらいになると新造として披露した。…

【太夫】より

…太夫は,容色が美しいだけでなく,芸能,文学,遊戯,茶道などの広い範囲にわたる高い教養を備えることを要求された。このため,かむろ(禿)の時代から厳重に仕込まれ,新造(または引舟(ひきふね)),天神と順次に昇進するうちに選びぬかれる。かむろ1000人中で太夫に達するのは3~5人ともいわれ,元禄ごろで遊女100人に対し太夫は2~4人であった。…

※「新造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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