日本捕虜志(読み)にほんほりょし

改訂新版 世界大百科事典 「日本捕虜志」の意味・わかりやすい解説

日本捕虜志 (にほんほりょし)

長谷川伸史伝。1949-50年に《大衆文芸》に連載,55年私家版として刊行。日本人がどのように捕虜を遇してきたかを,丹念な資料調査を踏まえ,挿話や物語として再現したもの。663年(天智2)の白村江(はくそんこう)の戦から説き起こし,とくに日清・日露両戦役での捕虜問題に多くの筆を割き,捕虜に対する敬意,思いやり,人情などを描いて当時の日本人の美質を明らかにした。発表時,戦勝国の一方的な軍事裁判への抗議と,敗れた日本人へ自覚をうながすものと受け取られた。しかし実際の執筆は戦時中に始まっており,勝敗を超えたところで,日本人の民族性や人間性を見きわめようとした点に,作者真意はあったとみるべきであろう。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android