日銀特融(読み)ニチギントクユウ

デジタル大辞泉 「日銀特融」の意味・読み・例文・類語

にちぎん‐とくゆう【日銀特融】

《「特融」は「特別融資」の略》日本銀行が、内閣総理大臣財務大臣要請を受け、経営不振に陥った金融機関に対してする無担保の融資。システミックリスク回避のために行われる。→最後の貸し手

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百科事典マイペディア 「日銀特融」の意味・わかりやすい解説

日銀特融【にちぎんとくゆう】

金融不安を防ぐため日本銀行が経営不振で資金不足に陥りそうな金融機関に対し実施する無担保の特別融資。1997年までの旧日銀法25条では,同法の定める日銀の通常業務の範囲を超える貸出しや出資があっても,信用制度の保持・育成のために必要とされる場合は,大蔵大臣の許可を得て実施ができると規定されている。これが1997年の新日銀法37条においては,金融機関の一時的かつ緊急の流動性不足には日銀独自の判断で資金供給を行うことができると規定。さらに38条において,経営の健全性に問題のある金融機関の処理などについては,政府からの要請を前提に,政府と日銀の合意を経て必要な措置を行うことができると規定し,積極的な姿勢を示した。 日銀特融の代表例としては,1965年の証券不況の際,山一証券大井証券に対して日本興業銀行富士銀行,三菱銀行(現東京三菱銀行)の3行を通して,公定歩合で282億円を貸し出した。最近の例では,経営が破綻した東京協和,安全の2信用組合の受け皿となった東京共同銀行(1996年9月に整理回収銀行に改組)にも融資を実施。同年経営破綻した兵庫銀行,木津信用組合へも融資,1997年に破綻した山一証券,北海道拓殖銀行へも融資を実施した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日銀特融」の意味・わかりやすい解説

日銀特融
にちぎんとくゆう

日本銀行が金融機関に対して行う無担保の特別貸付けのこと。1997年(平成9)に公布された改正日本銀行法は、日銀の目的として、通貨の発行と調節と並んで信用秩序の維持に資することをあげている。同法第37条によって、金融機関が電子情報処理組織の故障などのため一時的かつ緊急の流動性不足に陥ったとき、日銀は信用秩序維持の見地から、当該金融機関に対し無担保の緊急融資(日銀特融)を行うことができる。また同法第38条によって、金融機関の破綻(はたん)から信用不安が拡大し、金融システム全体に悪影響が及ぶおそれがでた場合、政府は日銀に対し無担保融資(日銀特融)を要請することができ、日銀は政策委員会の同意を得て融資を実施することになる。いずれも、日銀の通常業務としての貸付け(第33条)と区別して日銀特融とよばれている。これはまた、中央銀行の「最後の貸し手」としての機能にかかわるものであり、個々の金融機関の経営救済を目的とするものではなく、あくまでも信用秩序の維持を目的とすべきものである。

 第二次世界大戦前の日銀特融の例は、1927年(昭和2)の金融恐慌時に政府保証のもとに多額の預金払戻資金が日銀特融によって供給された。戦後においては1965年(昭和40)の証券不況時に証券会社2社(山一、大井)に民間銀行経由で行われた。最近ではバブル崩壊の影響で初めは弱体金融機関、ついで大型金融機関・証券会社の経営破綻が発生、その処理について旧日銀法第25条に基づき日銀特融が実施された。

[石田定夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日銀特融」の意味・わかりやすい解説

日銀特融
にちぎんとくゆう

日本銀行が政府の要請に基づいて,資金不足に陥った金融機関に行なう無担保,無利子の特別融資。日本銀行法(37条,38条)に基づいて財務大臣が要請し,日本銀行政策委員会が決定する。37条に基づく融資はコンピュータシステムの故障による資金不足の場合,38条に基づく融資は経営悪化によって資金不足が生じた場合に発動される。いずれも,それを起点として金融システムが動揺することを防止するねらいがある。旧日本銀行法(25条)のもとでは,1965年の証券不況で経営危機に陥った山一證券,大井証券に対し初めて適用された。バブル経済崩壊後の金融危機に際し,1995年以降にコスモ信用組合,木津信用組合,兵庫銀行,みどり銀行,山一證券,北海道拓殖銀行に発動された。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「日銀特融」の解説

日銀特融

経営が危うい、もしくは実際に破たんしてしまった民間の金融機関に対して、日本銀行が行なう特別融資のこと。日銀法38条に基づいて行なわれる。通常、日銀は担保を取り、公定歩合に基づいた利子を付けて、金融機関に融資するが、日銀特融では無担保、無制限に融資を行なう。主に、金融機関の破たん処理や危機を未然に防ぐための公的資本注入、つなぎ融資の形態や、劣後ローンの供与という形で行なわれる。近年の日銀特融で大きなものとしては、97年に行なわれた北海道拓殖銀行、山一證券に対しての巨額の特融がある。

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