旧制高校の教養(読み)きゅうせいこうこうのきょうよう

大学事典 「旧制高校の教養」の解説

旧制高校の教養
きゅうせいこうこうのきょうよう

教養(教え養う)の語は,古来の漢籍にはなく明治以降に造語されたが,当初は教育(教え育てる)と同義語であった。大正期には主として夏目漱石門下で東京帝国大学の哲学担当のケーベル博士の影響を受けた,大正教養主義と呼ばれる知識人層によって,文化の享受を通しての人格の完成という特定の意味を持つ概念となった。彼らの生み出す岩波書店刊を多とする「哲学叢書」や『三太郎の日記』など翻訳書,解説書,それを素養としたおびただしい著述の最大の読者層こそが旧制高校の学生たちであった。彼らは,正規の教育課程で培った能力を用いて教育課程外での読書に耽った。そして旧制高校の寮生活という集団性が読書の量と質,教養の高さの競い合いを生み,特殊な価値観をもつ教養概念を定着させた。彼らが長じて関与した第2次世界大戦後の大学改革で,教養の語がイメージ的に大学のカリキュラムの概念として用いられたことが,その後の大学教育の混乱の潜在要因となっている。
著者: 舘 昭

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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