星の切符(読み)ほしのきっぷ(英語表記)Звёздный билет/Zvyozdnïy bilet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「星の切符」の意味・わかりやすい解説

星の切符
ほしのきっぷ
Звёздный билет/Zvyozdnïy bilet

ロシアの作家アクショーノフの長編小説。1961年『青春(ユーノスチ)』誌に発表。60年代ソ連の新しい文学の誕生を告げる画期的作品であった。28歳の秀才宇宙生理学者ビクトルと、その弟で自由奔放な17歳のディムカを主人公とし、古い社会体制に収まりきらない若い世代を、多声的(ポリフォニック)な構成のうちに描く。ビクトルは学界にはびこる権威主義と妥協せず、真理を追求するが、あえなく研究中に事故死する。一方、ディムカは仲間たちと家出をし、モスクワを抜け出してさまざまな体験を積み成長していく。とくにディムカの世代が、その「きたない」スラングを通じて生き生きと描かれているため、保守的な批評家のひんしゅくを買ったが、若い読者からは圧倒的な支持を受けた。

沼野充義

『工藤精一郎訳『星の切符』(中公文庫)』

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