太宰治の第1創作集。1936年砂子屋書房刊。初版には,1933年から36年にかけて発表された15の短編が収められている。遺書のつもりで書いたので《晩年》と題された。内容,文体ともに多彩で,太宰治の才能の萌芽がすべて出そろっている。そのなかで《葉》(1934)は習作の断簡によって構成された異色の作品。左翼運動からの転向後最初に書かれた《思ひ出》(1933)は幼年期から中学時代までの特異な感受性の成長をすなおに描き出した自伝的小説であり,《魚服記》(1933)は作者の内面の苦悩と民話的世界とが一体となった変身譚である。作者のユーモアやストーリー・テラーとしての才能を生かしたものに《ロマネスク》《彼は昔の彼ならず》(ともに1934)などがある。また,《道化の華》(1935)のように,作中に作家自身の〈僕〉が登場し,創作過程そのものを内側から描くという前衛的・実験的作品も含まれており,この作品集には〈二十世紀旗手〉としての太宰治の自負と野心がみなぎっている。
執筆者:東郷 克美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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