曰く・言く(読み)いわく

精選版 日本国語大辞典 「曰く・言く」の意味・読み・例文・類語

いわ‐く いは‥【曰く・言く】

[1] (動詞「いう(言)」のク語法)
(イ) (上の句を統合して体言化し、名詞的に用いて) 言うこと。
万葉(8C後)四・六一九「たわやめと 言雲(いはくも)(しる)く た童(わらは)の ねのみ泣きつつ たもとほり 君が使を 待ちやかねてむ」
(ロ) (副詞的に用いて下の引用語句を導く) 言うことには。
※続日本紀‐神護景雲三年(769)一〇月一日・宣命「又云(いはク)過を知りては必ず改めよ。能を得ては忘るなといふ」
※竹取(9C末‐10C初)「かくや姫のいはく『なんでうさることかし侍らん』といへば」
[2] ((一)から転じたもの。「実は」と打ち明けて言うこと、の気持を含み) 外からはわからない、隠れた事情や理由。とくに、複雑な、あまり好ましくない事情。
浄瑠璃・心中刃は氷の朔日(1709)上「どうしたいわくじゃ、気づかいな」
随筆胆大小心録(1808)六九「いわくがあって、東洞院の月渓と同じ長屋ずみになったが」
[語誌](一)(ロ)の引用文を導く形式は、漢文訓読に由来して、「いはく…といふ」のように動詞を繰り返す用法本来で、訓点資料では、平安初期のもの、あるいは中期以降の殊に漢籍関係のものに多い。訓点資料でも仏典の方では後ろの「いふ」を略して「と」のみを添えたり、「といふ」すべてを省略する形も多く見える。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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