動植物細胞の核分裂の一様式をいう。細胞サイクルのM期(有糸分裂期)にみられる基本的な様式で、古くは間接核分裂ともよばれた。無糸分裂(直接核分裂)に対する語である。無糸分裂では核が引き伸ばされて二分するのに対し、有糸分裂では染色質(クロマチン)が凝縮して染色体が形成されるとともに、微小管をその骨格とする紡錘体または分裂装置(紡錘体と星状体からなる)ができること、染色体が紡錘体上で両極に二分して核分裂が完了することが特徴である。有糸分裂は次のような経過をたどる。まず、S期(DNA分裂期)でDNA合成を完了した核がM期の前期に入ると、核内のクロマチン糸は螺旋(らせん)に巻き込まれ、ソレノイドとよばれる長い円筒状の構造からスーパーソレノイドとなり、さらに螺旋を重ねて染色体となる。それぞれの染色体はさらに縦裂して互いに接した染色分体をつくる。一方、中心体はS期に複製を始め、S期の後期には二つに分離して核の両側に位置する。M期の前期になると星状体の形成が始まる。星状体は、無数の微小管が中心体から立体放射状に伸びたものである。動物細胞では、前中期で核膜が消失すると、二つの星状体の間に、多いものでは4000本ほどの微小管を骨格とする紡錘体が形成される。その微小管の一部は染色体上の動原体とよばれる特定の構造部位に付着し、動原体と極を結ぶ動原体微小管となる。紡錘体上では、初めは不規則に配置している染色体が、しだいに紡錘体中央部に集まり、紡錘体軸に直交して一列に並ぶと中期である。後期は、染色分体が1本ずつ反対の極に移動する時期をよぶ。この移動は、主として極と染色分体の動原体を結ぶ動原体微小管束の働きによる。両極に集まった染色分体は染色体胞となり、互いに融合して娘核(じょうかく)をつくる。これが終期である。この核分裂のあとに細胞質分裂がおこる。植物細胞では、二娘核の間の紡錘体微小管が、細胞を仕切る新たな細胞膜のできる位置を決めるために働く。動物細胞では、細胞表層のアクチン繊維によって二娘核の間の細胞質がくびり切られ、2個の娘細胞ができる。
[酒井彦一]
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…やがて核膜が破れ核質と細胞質とは混じり合うが,染色体は微小管からなる分裂装置によって細胞質の両極に二等分され,それぞれ新たな核膜によって娘核(じようかく)をつくる。続いて起こる細胞質分裂によって新しい核をもつ二つの娘細胞ができあがる(有糸分裂)。一部の下等な真核細胞では,長く伸びた分裂核は中央でくびれて2個の娘核となり,その間,核膜が無傷のまま分裂は完了する(無糸分裂)。…
…一つの核がこのように二つの娘核になることを核分裂という。核分裂は従来,染色体や紡錘体のような糸状構造が現れる有糸分裂mitosisと,明確な形態変化が現れないまま核が二つにくびれる無糸分裂amitosisに分けられていたが,現在では後者は原核細胞では正常な分裂だが,真核細胞では病的細胞における退行的現象とみなされるようになっている。核分裂に引き続いて細胞質もそれぞれの核を含んで分かれる。…
※「有糸分裂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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