家庭医学館 「有鉤条虫症」の解説
ゆうこうじょうちゅうしょう【有鉤条虫症 Taeniasis Solium, Taeniosis Solium】
体長2~3mの有鉤条虫が小腸(しょうちょう)に寄生するものです。生(なま)の豚肉を食べ、肉内の幼虫(嚢虫(のうちゅう))を摂取して感染します。
注意しなければならないのは、虫卵(ちゅうらん)を飲み込んだり、成虫が寄生している人の体内で虫卵が幼虫となったときに発症する有鉤嚢虫症(ゆうこうのうちゅうしょう)です。
[症状]
成虫が寄生しているだけの場合は腹痛、下痢(げり)、体重減少などの症状がみられます。有鉤嚢虫症は筋肉、皮下、眼球(がんきゅう)、脳などに寄生し、てんかん、知覚異常などいろいろな症状をおこします。嚢虫は数年間生存した後、石灰化しますが、寄生部位によっては重い症状をひきおこします。
[検査と診断]
成虫寄生の場合は、排出された成虫の体節の検査、あるいは肛囲(こうい)検査法で虫卵を調べて診断します。
嚢虫寄生の場合は、採取された検体を調べて幼虫が見つかれば診断がつきます。X線検査やCT検査、血清反応(けっせいはんのう)検査も診断に役立ちます。
[治療]
有鉤条虫症も有鉤嚢虫症も入院治療が必要です。必ず専門医を受診してください。
有鉤嚢虫症の場合は、手術で摘出するか、プラジカンテル、アルベンダゾールを5~7日間内服します。嚢虫がこわれるときにその中の液が出てショックをおこす可能性がありますから、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンも併用されます。
成虫寄生の場合、虫体を破壊すると有鉤嚢虫症となるため、薬による治療は危険です。
造影剤のガストログラフィンを注入する方法もありますが、ゾンデ(探査針)が使用され、X線透視も必要なため、あまりお勧めできません。
豚肉の生や加熱不十分な料理は、絶対に食べないことが予防になります。