一定の時点から他の時点までの時間の長さ(限定時間)をいう。法律上,〈期間の経過〉に一定の法律効果が与えられることが多い(時効,借地権の存続期間,控訴・上告期間など)。期間と区別すべきものに〈期日〉がある。期日も,一瞬ではなく,一定の時間的長さをもっているが,経過する時間の長さに焦点をおく観念ではなく,ある時点(期日)において法律上意義のある一定の行為またはできごとが行われるべきであるという点に焦点をおく概念である(弁済期日,口頭弁論期日,投票日など)。
民法では,期間の計算方法が定められている(138~143条)。この計算方法は,他の法令で特例が定められている場合(例,年齢計算ニ関スル法律)や特別の慣行が行われている場合を除いて,私法だけでなく公法の分野でも原則として準用されている。時・分・秒を単位とする期間は,即時から起算し,自然的計算法によって期間が経過した時点で満了する。日・週・月・年を単位とする期間は,原則として初日を算入せず翌日から起算する。週以上を単位とする期間は,暦に従って計算される。期間は,末日の終了によって満了する。月・年を単位とする期間の末日に応当日がない場合には,その月の末日が期間の末日となる。たとえば,1月31日から1ヵ月,閏年2月29日から1年間という場合には,2月28日(後者は,翌年の)が末日となる。期間の末日が祝日・日曜日その他の休日に当たるときには,期間はその翌日まで延長される。年始3日間は,休日と解されるが,年末は官庁が休業している場合にも休日と解されない。
執筆者:岡本 坦
訴訟法において,時間の経過としての期間は,行為期間と猶予期間(中間期間,不行為期間)に区別できる。前者の場合は,その期間内に訴訟行為をしないとその機会を失う(失権)などの不利益を受ける(後述する職務期間は別)のに対し,後者では,その期間内は訴訟行為をなしえず,これをしても効力を生じない。行為期間は,訴訟行為の可能な時間的限界を設定して,合理的テンポで手続の進行や決着をはかる機能をもつ。猶予期間は,当事者等に熟慮や準備などのために時間的余裕を与えて手続の適正を確保するものである。これらの期間の始期や長さの定め方については,法律で定める法定期間と,裁判所または裁判官が定める裁定期間とがある。
(1)行為期間・猶予期間 猶予期間には,公示送達の効力発生期間(民事訴訟法112条)などがある。行為期間には,当事者の訴訟行為に関する固有期間と裁判機関の訴訟行為に関する職務期間とがある。口頭弁論終結から判決言渡しまでの期間(251条1項)などが職務期間の例である。職務期間は訓示的なもので,これに違反してもその訴訟行為の効果はそこなわれない。固有期間の例は判決手続中に多く,準備書面等提出期間(162条),上訴期間(285条,313条など)がある。(2)裁定期間・法定期間 前者の例としては,訴訟能力などの補正期間(34条1項)があり,後者には,上告理由書提出期間(315条)などがある。裁定期間は常に,法定期間は原則としてその伸縮が可能である(96条1項)。(3)通常期間・不変期間 法定期間のうち法律が不変期間と明定するものは,これ以外の通常期間と違い,裁判所も伸縮できないが,付加期間を定めることができ(96条2項),また,当事者がその責めに帰すべからざる事由によってその期間を遵守できなかったときは追完が認められる(97条)。不変期間には,主として裁判に対する不服申立期間が多い(285条2項,313条,342条1項など)。
なお,訴訟手続の中断・中止中,期間の進行は停止するが,その解消後は全期間が新たに進行を始める(132条)。
(1)行為期間・猶予期間 猶予期間には,第1回公判期日と召喚状送達の間の期間(刑事訴訟法275条)などがあり,訴訟関係人はその利益を放棄することができる。行為期間には,上訴期間(373条)などがある。(2)法定期間・裁定期間 法定期間は交通通信の便不便などにしたがい延長が可能である(56条1項)が,上訴期間にはこれを適用しない(同条2項)。ただし,上訴権者が自己または代理人の責めに帰することのできない事由によって上訴期間を徒過したときは,上訴権の回復を請求できる(362条以下)。なお。公訴の時効は,公訴の提起,犯人の逃亡などによって進行を停止する(254条,255条)。
→期限
執筆者:小島 武司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ある時点から他の時点に至る継続した時の区分をいう。法律上の期間は、それだけが法律要件とされることはないが、期間の満了によって、重要な法律効果が生じることとなる場合が多い。法律の定める期間には種々のものがあるが、たとえば、民法では、失踪(しっそう)期間、催告期間、時効期間、除斥期間など、民事訴訟法では、準備書面提出期間、上訴期間、再審期間など、刑事訴訟法では、告訴期間、上訴申立て期間、勾留(こうりゅう)期間など、行政訴訟法では、審査請求期間、異議申立て期間、出訴期間など、きわめて重要なものが多い。
法令、裁判所の命令または法律行為において期間の計算方法を定めなかったときのために、民法は補完的に期間の計算方法を以下のように定めた。
(1)時・分・秒を単位とする期間の計算方法は、自然的計算方法に従って、即時を起算点とし(民法139条)、定められた時・分・秒の終了した時を満了点とする。
(2)日・週・月・年を単位とする場合には、当該期間が午前0時から始まる場合にはその初日を、そうでない場合にはその翌日を、それぞれ起算点とする(同法140条)。ただし、「年齢計算に関する法律」、戸籍などは初日を算入する。
(3)期間を日・週・月または年をもって定めたときは、期間の末日の終了を満了点とする(同法141条)。
(4)何が期間の末日となるかについては、暦に従って計算するものとし(同法143条1項)、週・月・年の初日から期間を計算するのでない場合には、最後の週・月・年においてその起算日に応当する日の前日を期間の末日とする(同法143条2項)。たとえば、3月10日から2か月という場合は、途中の日数に関係なく5月9日に期間が満了する。
このような民法の期間計算法は、私法関係だけでなく、公法関係にも適用されると解されている。なお、法律上、期間と期限は異なる。
[淡路剛久]
訴訟法上の期間については、若干の特別規定がある。時間の経過としての期間として、行為期間と猶予期間(中間期間、不行為期間ともいう)に分けられ、これらの始期、長さの定め方について、法定期間と裁定期間とがある。
民事訴訟法上、猶予期間には、公示送達の効力発生期間(民事訴訟法112条)などがあり、行為期間には、準備書面提出期間(同法162条)、上訴期間(同法285条、313条)、再審期間(同法342条)などがある。法定期間、裁定期間については、前者はつねに、後者は事情により変更することができる。ただし、不変期間はこの限りでない(同法96条1項)。不変期間はかならず明示される(例、控訴期間―同法285条)。期間の計算は民法による(民事訴訟法95条1項)。
なお、訴訟手続の中断・中止の間は、期間の進行は停止し、その解消後、新たに全期間が進行を始める(同法132条2項)。
刑事訴訟法上、期間の計算について、時で計算するものは民法と同様、即時から起算し、日・月・年で起算するものは初日を算入せず、月および年は暦に従って計算する。ただし、時効期間だけは時間にかかわらず、初日を1日として計算する(刑事訴訟法55条)。法定期間は、裁判所の規則で定めるところにより延長できるが、上訴提起期間には適用されない(同法56条1項・2項)。
なお、訴訟法以外でも、刑法(22条~24条)、土地収用法(135条)、国税通則法(10条)、特許法(3条)、手形法(36条)など、期間の計算の特例について規定を置く例も多い。
[内田一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…経済現象を動学的に,すなわち時間を体系の変数として明示的に取り入れた形で分析しようとするとき,時間を取り扱う方法に,経済学では期間分析と連続分析continuous analysisの二通りがある。このうち期間分析とは,時間の流れを通常同じ長さと仮定される〈期間〉の連鎖として取り扱う方法である。…
※「期間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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