木々高太郎(読み)キギタカタロウ

デジタル大辞泉 「木々高太郎」の意味・読み・例文・類語

きぎ‐たかたろう〔‐たかタラウ〕【木々高太郎】

[1897~1969]大脳生理学者・小説家山梨の生まれ。本名、林たかしソ連に留学し、パブロフ条件反射理論を日本に紹介。一方で探偵小説作家としても注目を集め、探偵小説芸術論を展開。「推理小説」という言葉の生みの親。「人生の阿呆」は推理小説として初の直木賞受賞作。他に「網膜脈視症」「文学少女」「新月」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「木々高太郎」の意味・わかりやすい解説

木々高太郎
きぎたかたろう
(1897―1969)

推理作家、生理学者。本名林髞(たかし)。山梨県甲府生まれ。慶応義塾大学医学部を卒業。医学博士となり、1929年(昭和4)当時のソ連に留学して条件反射学を専攻海野十三(うんのじゅうざ)の勧めで1934年、精神分析主題にした『網膜脈視症』でデビュー(ペンネームは本名の字画を分解したもの)。その後、探偵小説芸術論を提唱、その趣旨を生かした作品として長編人生阿呆(あほう)』(1936)を発表して、推理小説としては初めて直木賞を受賞。清新な文体と知的作風が高く評価されたもので、当時成長期にあった創作推理文壇を大いに鼓舞した。作品としてはほかに女性心理を追求した『文学少女』、長編『わが女学生時代の犯罪』、第1回の探偵作家クラブ賞を受けた『新月(しんげつ)』(1946)などがある。生理学者としては1946年に母校の教授となり、欧米各地の生理学会で講演し、世界的に知られた。主著に『条件反射学方法論』(1940)、『大脳生理学』(1944)がある。

厚木 淳]

『『木々高太郎全集』全6巻(1970~1971・朝日新聞社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木々高太郎」の意味・わかりやすい解説

木々高太郎
きぎたかたろう

[生]1897.5.7. 山梨
[没]1969.10.31. 東京
小説家,生理学者。本名,林髞 (たかし) 。 1924年慶應義塾大学医学部卒業。 32年留学,I.パブロフに条件反射について学んだ。主著『大脳生理学』 (1944) 。精神分析を主題とする推理小説にもすぐれ,処女作『網膜脈視症』 (34) で登場,探偵小説芸術論を提唱し,『人生の阿呆』 (36) で直木賞を受けた。 54~60年探偵作家クラブ会長。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「木々高太郎」の解説

木々高太郎 きぎ-たかたろう

林髞(はやし-たかし)

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世界大百科事典(旧版)内の木々高太郎の言及

【推理小説】より

… 日本で〈推理小説〉という語が,もっと広い意味で,以前の〈探偵小説〉の同義語として一般化したのは,第2次世界大戦後のことである。ひとつには,漢字制限により〈偵〉の字が一般に使われにくくなったからでもあるが,もっと大きな理由として,木々(きぎ)高太郎(1897‐1969。林髞)の提唱があった。…

※「木々高太郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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