東南アジア非核地帯条約(読み)とうなんアジアひかくちたいじょうやく

百科事典マイペディア 「東南アジア非核地帯条約」の意味・わかりやすい解説

東南アジア非核地帯条約【とうなんアジアひかくちたいじょうやく】

1995年12月に,東南アジア諸国連合ASEAN首脳会議において採択され,東南アジア各国における核兵器の製造,所有,配置,移動,実験,使用を禁ずる条約。1995年の中国とフランスの核実験がこの地域の国々に大きな衝撃を与え,また,1995年2月に米国が支持を表明したことで,一気に条約締結への機運が高まり,合意に至った。1997年3月発効。ASEAN加盟の10ヵ国が署名(2004年末現在)。この条約では,非核兵器地帯批准国の領土領海領空のほか大陸棚経済水域までも含むとし,また域外国による核兵器の配備・実験も禁ずるとしている。ASEANでは,今後条約に付属する議定書に対する核保有5ヵ国の批准を求めていく,としている。→トラテロルコ条約ラロトンガ条約ペリンダバ条約
→関連項目核拡散防止条約

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「東南アジア非核地帯条約」の意味・わかりやすい解説

東南アジア非核地帯条約
とうなんあじあひかくちたいじょうやく
Treaty on the Southeast Asia Nuclear-Weapon-Free Zone

東南アジア域内での核兵器の開発使用を禁止し、非核地帯とする条約。1995年バンコクで開かれたASEAN(アセアン)(東南アジア諸国連合)首脳会議で、当時加盟の7か国と非加盟であったミャンマーラオスカンボジアを加えた10か国により調印され、1997年3月発効した。バンコク条約ともいう。同条約は核兵器開発、配備、実験、使用などの禁止のほか、放射性物質・廃棄物の投棄海上陸上を問わず禁止している。ただ、核兵器搭載艦船や航空機の寄港、通過については各国の判断に任せている。フィリピンの批准が遅れていたが2001年3月に批准し、すべての当事国の批准が完了した。しかし、アメリカ、中国が条約の内容に不満をもち、米英仏中ロの核保有国5か国が付属議定書に署名していないため、実効性はまだない。

[大井 誠]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「東南アジア非核地帯条約」の意味・わかりやすい解説

東南アジア非核地帯条約
とうなんアジアひかくちたいじょうやく
Southeast Asia Nuclear-Weapon Free Zoon Treaty; SEANWFZ

東南アジア地域の非核化を進める条約。 1995年 12月 15日,ASEAN7ヵ国にラオス,カンボジア,ミャンマーの首脳がバンコクで調印。加盟国の領土,大陸棚,経済専管水域内での核兵器の保有,実験,使用を禁止するものだが,たとえば核を搭載したアメリカの艦船が航海することは禁じていないし,寄港・通過を許可するかどうかも各国の判断にまかされている。それでも,大国の利害に巻き込まれまいという,ASEANが発足当初から進めてきた戦略の1つが実を結んだといえる。加盟国はいずれも核不拡散条約 (NPT) の加盟国でもある。核保有国に対しても非核地帯条約への加盟を呼びかけており,中国は前向きな動きをみせているが,アメリカは消極的である。

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