日本大百科全書(ニッポニカ) 「東風(こち)」の意味・わかりやすい解説
東風(こち)
こち
春から夏にかけて吹く東寄りの風。氷を解き、春を告げる風として、古来雅語として取り入れられた。雨を伴うことが多く、この風が吹くと寒さが緩むので一般には喜ばれるが、海上生活者には時化(しけ)になる風として警戒された。東風は単独に使われるほか、次のようなさまざまな複合した名称としても使われる。
朝東風(あさごち)、雲雀東風(ひばりこち)(瀬戸内地方で3、4月ごろ吹く)、雨東風(あめこち)(九州の小倉(こくら)地方でいう)、いなだ東風(三重県志摩半島の白木(しらき)での呼称)、鰆ごち(さわらごち)(岡山県で春のサワラ漁のころに吹く)、青東風(夏、青空のもとで吹く)、星の入り東風(10月ごろ、おうし座のすばる星の沈む明け方に吹く)。
東風は春の季語として「梅ごち」「桜ごち」「正(まさ)東風」「春風」などがある。
[根本順吉]