(読み)かせ

精選版 日本国語大辞典 「枷」の意味・読み・例文・類語

かせ【枷】

〘名〙 (「かし(枷)」の変化した語)
① 鉄や木でつくり、刑具として罪人の首や手足にはめたり、また、家畜につけたりして、自由に行動できないようにするもの。桎梏(しっこく)。かし。
※金刀比羅本保元(1220頃か)中「甲の鉢付の板を左より右へ挊(カセ)つつと射ぬかれたり」
② 自由な心や行動の妨げとなるもの。ほだし。
浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)下「ささゆるもかせと成」
※二日物語(1892‐1901)〈幸田露伴〉彼一日「養はれたる恩義の桎梏(カセ)に」
③ 他を攻撃したり、いいがかりをつけたり、動きを妨げたりするための手段や口実となるもの。
※歌舞伎・貞操花鳥羽恋塚(1809)五立「其方達が敵を枷に、有国めを追ひ返したばっかり」
俳優演技を助ける手段となる小道具子役など。
※歌舞伎・彩入御伽草(1808)辻堂の場「両人、抱き子を枷に立廻りのタテ
三味線上調子を弾く時、音を高めるために弦の上から棹(さお)に当てるもの。木や象牙、時に金属で作った棒状のもので、横にして紐で結びつける。
※国町の沙汰(1674)「紫檀の三味線〈略〉銀のかせ掛」

かし【枷】

〘名〙 鉄や木で作り、罪人の首、手、足などにはめて自由を束縛する刑具。首かし、手かし、足かしなどがある。かせ。
正倉院文書‐天平宝字六年(762)雑材并檜皮和炭等納帳「架十枝 各長一丈六尺方三寸」
新撰字鏡(898‐901頃)「鎖 連也 足加志 又加奈保太志」

かせ・ぐ【枷】

〘他ガ四〙 (名詞「かせ(枷)」の動詞化) 動きを妨げる。支えとめる。防ぐ。
※保元(1220頃か)中「しばしば矢にかせがれて溜(た)まる様にぞ見えし」

かせぎ【枷】

〘名〙 (動詞「かせぐ(枷)」の連用形の名詞化) さえぎるもの。防ぐもの。防御物。
※浄瑠璃・善光寺御堂供養(1718)二「岩のかせぎに身をひそめ」

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デジタル大辞泉 「枷」の意味・読み・例文・類語

かせ【×枷】

《「かし(枷)」の音変化》
昔の刑具の一。鉄や木で作り、罪人の首・手・足などにはめて、からだを自由に動かせないようにするもの。桎梏しっこく。かし。
心理的、物理的に行動の妨げになるもの。「古いしきたりがになる」
他人の行動を制約するための言いがかり。口実。
ちっとばかりの貸しを―に」〈鏡花歌行灯
三味線で上調子を弾くとき、音を高くするために用いる細い棒。木や象牙で作り、両端の穴に糸を通し、さおに当てて縛りつける。
俳優が自分の演技を効果的にするために使う人や物。
「懐より財布を引き出し、これを―に立ち回り」〈伎・小袖曽我

かし【×枷】

かせ(枷)」に同じ。〈和名抄

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百科事典マイペディア 「枷」の意味・わかりやすい解説

枷【かせ】

械とも書き,〈かし〉ともいう。昔の刑具で,罪人の手足や首などを拘束するもの。木製または金属製で,首枷足枷,手枷などがある。
→関連項目刑具

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【刑具】より

…中国律の笞(ち),杖(じよう)は後者の例である。自由刑では手錠(手鎖(てじよう)),枷(かせ)が代表的であり,これらは戒具としても使用される。前近代の刑罰は一般に名誉刑的要素をもっているが,とくにその性格が著しい刑具に,西洋のさらし台,江戸時代の穴晒箱(あなざらしばこ),罪科を記した捨札(すてふだ)および幟(のぼり)などがある。…

※「枷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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