核多角体病(読み)かくたかくたいびょう(その他表記)nuclear polyhedrosis

改訂新版 世界大百科事典 「核多角体病」の意味・わかりやすい解説

核多角体病 (かくたかくたいびょう)
nuclear polyhedrosis

昆虫のウイルス病群の一つで,カイコなど主に鱗翅目昆虫に発生する。病原ウイルスは長さ250~350nm,幅40~60nmの杆(かん)状粒子で,通常粒子は束になって共通の外膜に包まれている。核酸は複鎖DNAである。血球,気管皮膜,脂肪組織,真皮など多くの組織を侵し,細胞核で増殖し,最終的に多角体といわれるタンパク性の封入体(直径2~4μm)を形成して多くのウイルスはその中に埋めこまれる。感染末期には組織が崩壊し,多角体が血液中に遊離する結果,血液は乳白色の膿汁状になる。このためカイコでは昔から膿病jaundiceと俗称されている。カイコ幼虫病徴としては,まず体色が汚れたように変色し,つぎに体節間膜の部分が膨れ,落着きなくはい回る。皮膚は傷つきやすく,傷口から乳白色に濁った血液を流して死亡する。死体は速やかに黒褐色を呈して腐乱溶解する。幼虫だけでなくさなぎやガでも発病することがあるが,幼虫の場合のように明瞭な病徴を示さず,死体はわずかの衝撃で形がくずれて溶解する。野外の昆虫では樹木頂上にはいあがり,枝や葉にぶらさがった状態で死亡している場合があるので,梢頭病(しようとうびよう)と俗称されている。多角体に埋めこまれたウイルス粒子は自然環境下で病原力が比較的安定であり,昆虫が多角体で汚染された餌を食下すると消化管内で多角体が溶解し,ウイルス粒子が遊離し体内に侵入することで病気が伝染する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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