俵の両端の口に当てる直径30センチメートルくらいの円形の藁蓋(わらぶた)。これによって、俵のゆがみや口からの漏れを防ぐ。大きさをそろえたり、円形を保つために石臼(いしうす)などを台にしてつくる。現在では桟俵が標準名となっているが、この名はもともと近畿・中国地方の方言で、このほかに各地でさまざまな呼び名がある。俵バイシ(岩手県)、サダラ(秋田県)、サンバイシ・サンバス(新潟県)、バヤシ(埼玉県)、俵バセ・バセ・サンバアテ(長野県)、俵バシ(愛知県)、サドウラ(香川県)などである。これらの呼称から桟俵は、バセ、ハヤシというのが原語で、それに「サ」「俵」などをつけて呼び名にしたことがわかる。「サ」はサツキ、サオリ、サノボリなど稲作の信仰にちなむ語であり、これをつけることによって米俵の藁蓋という限定をしたのである。桟俵は『粉河寺(こかわでら)縁起絵巻』(鎌倉時代初期)に描かれており、創案は古く、その編み方や俵への当て方にはいろいろある。桟俵と同形の藁座は疱瘡(ほうそう)送りや神送りに各地で使われ、一部の地方には正月の年神(としがみ)祭りにもこれを使う所がある。
[小川直之]
俵の両端につける円形の藁ぶたをさし,サンバヤシとかバセともいう。桟俵は神座や神饌の容器として,正月には年神の幣束をさしたり,鏡餅をのせるのに使われる。しかし,最も顕著なのは,疱瘡や麻疹(はしか)にかかったり,はやったりしたときに,桟俵に御幣,赤飯,神酒などをのせて辻や村境に捨てたり川に流す風習である。3月節供の流しびなも桟俵にのせて流す。また,胞衣(えな)を埋める際に桟俵にのせて埋め,葬式で枕飯や枕団子を作った道具や灰は桟俵にのせて辻や庭先に捨てる。この他,死者を納棺するときには桟俵を尻の下や頭上におく風もみられる。これらの風習はみな病気や死者を桟俵にのせてこの世から異界へ送り出す行事といえる。一方で,正月の成木責めや出産のときに夫が桟俵を頭にかぶる風習もみられ,こちらは逆に異界からこの世へ豊穣や生命をもたらす行事といえるようである。桟俵はある意味で神と人,異界とこの世を媒介する道具といえよう。
執筆者:飯島 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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