日本大百科全書(ニッポニカ) 「梅原北明」の意味・わかりやすい解説
梅原北明
うめはらほくめい
(1899―1946)
翻訳家、性風俗研究家。本名は貞康(さだやす)。ペンネームは吾妻(あづま)大陸など多数。富山市に生まれる。早稲田(わせだ)大学英文科中退。1925年(大正14)「芸術に対する迷信」打破を唱え、金子洋文(ようぶん)、村山知義(ともよし)らと『文芸市場』を発行。ダダイズム、プロレタリア文学などとゴシップや変態資料とを雑居させた特異な文学運動をおこした。さらに『変態資料』『グロテスク』などを次々と創刊。大正末期から昭和初期にかけてのエロ・グロ・ナンセンス文化の一面を代表する。しかしその底部には独自の反逆精神と時代の病理を鋭く見抜く認識眼があった。また『明治大正綺談(きだん)珍聞大集成』など独特の視角からみた社会風俗資料集も編纂(へんさん)した。34年(昭和9)日本劇場支配人となる。
[有山輝雄]