謡曲、浄瑠璃(じょうるり)、小説などに登場する悲劇の少年の名。説経浄瑠璃では『梅若』または『隅田川(すみだがわ)』の題名で、『苅萱(かるかや)』『山荘太夫(さんしょうだゆう)』『愛護若(あいごのわか)』などとともに五説経のなかに加える者もある。梅若丸の父は京都・北白河の吉田少将で、母は斑女(はんじょ)。父の死にあった12歳の梅若丸は、奥州の知人を頼って下向する途中、人買い男にだまされて、武蔵(むさし)と下総(しもうさ)の境にある隅田川のほとりで病死する。母が尋ねてきたときには、すでに梅若丸は死んでいたので母は狂乱する。謡曲『隅田川』はそのさまを描いたものである。梅若丸を哀れんだ隅田河畔の里人が、死んだ場所に塚を設けて弔った。その梅若塚は現在、東京都墨田区堤通の木母寺(もくぼじ)にある。この伝説は木母寺の縁起となっているが、同寺では4月15日を梅若忌として大念仏会(だいねんぶつえ)を行う。小説では1656年(明暦2)に仮名草子『角田川(すみだがわ)物語』が出版され、1734年(享保19)には浮世草子『梅若丸一代記』(八文字屋本)が出た。古浄瑠璃では山本土佐掾(とさのじょう)の『角田川』があり、やがて近松門左衛門作といわれる浄瑠璃『雙生(ふたご)隅田川』が現れ、歌舞伎(かぶき)の4世鶴屋南北(つるやなんぼく)作『隅田川花御所染(はなのごしょぞめ)』(1814、市村座初演)にまで発展した。
[関山和夫]
…観世元雅(もとまさ)作。シテは梅若丸の母(狂女)。武蔵と下総(しもうさ)の国境にある隅田川の渡し守(ワキ)が客を待っていると,旅人(ワキヅレ)が来て,あとから女物狂いがやって来ることを知らせる。…
…《双生隅田川》以後,江戸歌舞伎では《法界坊》(《隅田川続俤(ごにちのおもかげ)》),《忍ぶの惣太》(《都鳥廓白浪(みやこどりながれのしらなみ)》),さらに《清玄桜姫》(《隅田川花御所染》《桜姫東文章》)とも結合していく。また,梅若丸の命日が3月15日とあるところから,隅田川物は弥生狂言として上演されることが多かった。そのため,正月狂言の後日という関係から,曾我物の趣向ともからまって複雑化していった。…
※「梅若丸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加