( 1 )初めは、推進具と方向決定とは機能分化しておらず、カヂに方向決定の意味内容も含まれていたと考えられる。方向決定専門の正舵は、中国の後漢には成立しており、奈良時代の遣唐使船にも備えられてタイシと呼ばれたが、カヂでも方向舵を意味したことは、カヂトリが漕ぎ手であるカコと別の職掌を表わすこと等から明らかである。
( 2 )中世以降、方向舵を表わす語としてはカヂが優勢となり、「カヂ=方向舵」「カイ=推進具」という使い分けが行なわれるようになったと思われる。しかし、「カイ・カヂ=推進具」という用法も根強く、現在は紛らわしさを避けるため、推進具を「オール」等の外来語で表わすようになってきている。
(久保田啓一)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
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