楊梅宮(読み)やまもものみや

改訂新版 世界大百科事典 「楊梅宮」の意味・わかりやすい解説

楊梅宮 (やまもものみや)

《続日本紀》にみえる平城宮内の離宮。同書に宝亀3年(772)を最初として光仁天皇の時期に5回ほどあらわれる。宝亀8年9月の記事には,むかし藤原仲麻呂が楊梅宮の南に邸宅田村第(たむらのだい))をつくって高楼をかまえ,内裏を見おろしたという記事があり,その位置からみて平城宮の東院がふさわしいとされている。また同年6月の記事には〈楊梅宮の南の池に蓮を生ず〉とあるが,これは平城宮東院の発掘調査で大規模な園池が見つかっていることともよく対応している。江戸時代の地誌《大和志》には,東院付近に楊梅天神(ようばいてんじん)(宇奈太理坐高御魂(うなたりにいますたかみむすび)神社)があったとしているが,これも楊梅宮と関連しているのかもしれない。発掘された園池は南北70m,東西60mちかい池をもち,水際を石でかためている。池の中央を東西にわたる回廊をつくり,その西に八角堂や釣殿風の殿舎を配置している。池は8世紀前半の養老と半ばの天平勝宝の2度にわたってつくられ,平安時代初頭まで続いた。長岡京跡から出土した木簡に〈山桃院〉とあるのは楊梅宮のことかもしれない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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