社会生活においてある危険な活動を反覆・継続して行うにあたり必要とされる注意を怠ること。現行刑法には、過失致死傷罪のなかに、通常の過失の加重類型として、業務上過失、重大な過失のほか、2007年(平成19)に追加された自動車運転上過失がある(刑法211条1項、2項)。また、失火罪についても、通常の過失に加えて、加重類型として、業務上失火と重失火の規定がある(刑法117条の2)。過失致死傷事件については、交通事犯の多さから、かつては、その圧倒的部分を業務上過失による場合が占めていたが、自動車運転上過失の追加以降は、自動車運転過失致死傷罪によって処理されることとなった。
ここに「業務」とは、社会生活上反覆・継続して行う活動を意味する。まず、業務は社会生活上の活動でなければならないから、たとえば家庭で日常的に行う家事などは私生活上のものであり、これには該当しない。したがって、炊事を行うに際し火を失しても業務上失火罪にはあたらない。また、業務は反覆または継続して行うことを要するから、いかに危険性の高い活動であっても、反覆継続性がなければ、これにあたらない(ただし、現に反覆継続していなくても、反覆継続しようとする意思があれば、これにあたるとした裁判例がある)。なお、これらの要件を満たす限り業務といえるから、この業務が適法か違法かを問わないし、文字どおり職業に伴う活動(仕事)として行われることを要しない。
[名和鐵郎]
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…このように,認容の有無によって故意と過失とを区別する一般的見解に対して,故意の成立要件として認容を不要とする説もあり,それによれば,〈認識ある過失〉というものはないことになる。(b)単純な過失(軽過失),重過失,業務上過失 重過失とは,過失の程度が著しい場合,いいかえれば,ごくわずかな注意をすれば過失が除去されたであろう場合である。業務上過失とは,業務として危険行為に携わる者の過失である。…
※「業務上過失」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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