業務上過失(読み)ギョウムジョウカシツ

デジタル大辞泉 「業務上過失」の意味・読み・例文・類語

ぎょうむじょう‐かしつ〔ゲフムジヤウクワシツ〕【業務上過失】

社会生活において、他人生命身体危害を加えるおそれのある行為反復・継続して行う際に、必要とされる注意を怠ること。業務過失致死傷罪は、一般の過失致傷罪・過失致死罪よりも重く罰せられる。
[補説]この場合の業務とは、職業上の活動に限らず、娯楽のための個人的な活動なども含まれる。→業務2

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精選版 日本国語大辞典 「業務上過失」の意味・読み・例文・類語

ぎょうむじょう‐かしつゲフムジャウクヮシツ【業務上過失】

  1. 〘 名詞 〙 一定の業務についている者が、その業務上必要とされる注意を怠ること。この結果、人を死傷させたりしたときは一般の過失による場合より刑が重くなる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「業務上過失」の意味・わかりやすい解説

業務上過失
ぎょうむじょうかしつ

社会生活においてある危険な活動を反覆・継続して行うにあたり必要とされる注意を怠ること。現行刑法には、過失致死傷罪のなかに、通常の過失の加重類型として、業務上過失、重大な過失のほか、2007年(平成19)に追加された自動車運転上過失がある(刑法211条1項、2項)。また、失火罪についても、通常の過失に加えて、加重類型として、業務上失火と重失火の規定がある(刑法117条の2)。過失致死傷事件については、交通事犯の多さから、かつては、その圧倒的部分を業務上過失による場合が占めていたが、自動車運転上過失の追加以降は、自動車運転過失致死傷罪によって処理されることとなった。

 ここに「業務」とは、社会生活上反覆・継続して行う活動を意味する。まず、業務は社会生活上の活動でなければならないから、たとえば家庭で日常的に行う家事などは私生活上のものであり、これには該当しない。したがって、炊事を行うに際し火を失しても業務上失火罪にはあたらない。また、業務は反覆または継続して行うことを要するから、いかに危険性の高い活動であっても、反覆継続性がなければ、これにあたらない(ただし、現に反覆継続していなくても、反覆継続しようとする意思があれば、これにあたるとした裁判例がある)。なお、これらの要件を満たす限り業務といえるから、この業務が適法か違法かを問わないし、文字どおり職業に伴う活動(仕事)として行われることを要しない。

[名和鐵郎]

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百科事典マイペディア 「業務上過失」の意味・わかりやすい解説

業務上過失【ぎょうむじょうかしつ】

一定の業務に従事する者が,その業務上必要な注意を怠ること。行為者の具体的な注意能力は度外視され,もっぱら業務上要求される客観的注意義務により判断。業務とは継続して従事する活動であって,人の生命身体に対する危険を含むものとされる。一般の過失よりも刑を加重。
→関連項目往来妨害罪過失傷害罪過失致死罪失火罪

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世界大百科事典(旧版)内の業務上過失の言及

【過失】より

…このように,認容の有無によって故意と過失とを区別する一般的見解に対して,故意の成立要件として認容を不要とする説もあり,それによれば,〈認識ある過失〉というものはないことになる。(b)単純な過失(軽過失),重過失,業務上過失 重過失とは,過失の程度が著しい場合,いいかえれば,ごくわずかな注意をすれば過失が除去されたであろう場合である。業務上過失とは,業務として危険行為に携わる者の過失である。…

※「業務上過失」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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