樋の酒(読み)ヒノサケ

デジタル大辞泉 「樋の酒」の意味・読み・例文・類語

ひのさけ【樋の酒】

狂言主人太郎冠者には米蔵次郎冠者には酒蔵を離れないで番をするように言って出かけるが、二人は蔵と蔵との間に樋を掛け渡して酒を流し、酒宴を始める。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「樋の酒」の意味・わかりやすい解説

樋の酒
ひのさけ

狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。和泉(いずみ)流現行曲、大蔵(おおくら)流でも上演することがある。主人は、太郎冠者(シテ)に米蔵を、次郎冠者には酒蔵を預け、それぞれ持ち場を離れず留守番をするように命じて出かける。太郎冠者がふと窓から酒蔵をのぞくと、次郎冠者が盗み酒をしている。太郎冠者も相伴にあずかりたいが米蔵をあけるわけにはいかず、思案のすえ、竹の樋(とい)を窓越しに渡して酒蔵から米蔵へ酒をつぐ。いい気分になった2人はいちいち樋の酒はめんどうと、酒蔵へ合流。酒宴最高潮に主人が帰宅し、2人をみつけて追い込む。米蔵を橋掛り一ノ松、酒蔵を本舞台に設定し、その間を長い樋でつなぐという、能舞台空間の特殊性を生かした演出がすばらしい。

[油谷光雄]

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