日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
樽(クロフツの推理小説)
たる
The Cask
イギリスの推理作家F・W・クロフツの代表作。1920年刊。ロンドンのセント・キャザリン埠頭(ふとう)に荷揚げされたフランスからの樽の中に、おがくずと金貨といっしょに1人の婦人の死体があった。フランスに渡ったイギリスの警部は、現地警察の協力のもとについに容疑者をつきとめるが、樽の輸送された経過や時刻からみて、彼には確固としたアリバイがある。なんとかしてそのアリバイを破らねばならない。密室、死体消失などと並んで、本格推理小説トリックの大きな要素の一つになっているアリバイ・トリックを扱った古典的名作である。
[梶 龍雄]
『『樽』(三浦朱門訳・講談社文庫/宇野利泰訳・新潮文庫/大久保康雄訳・創元推理文庫)』