橘湾(読み)タチバナワン

デジタル大辞泉 「橘湾」の意味・読み・例文・類語

たちばな‐わん【橘湾】

徳島県東部、阿南市にある湾。島が多く、弁天島には天然記念物の亜熱帯性植物群落がある。
長崎県島原半島長崎半島との間にある千々石ちぢわ湾の異称日露戦争時の陸軍中佐橘周太の名にちなむ。

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精選版 日本国語大辞典 「橘湾」の意味・読み・例文・類語

たちばな‐わん【橘湾】

  1. [ 一 ] 徳島県東部、阿南市南東の湾。湾入が深く、小勝島高島・熱帯植物群落(国天然記念物)のある弁天島などの小島が点在。江戸時代、湾岸では塩田が営まれた。阿波の松島。
  2. [ 二 ] 長崎県南東部、島原半島と長崎半島とに囲まれた湾。イワシ漁業が盛ん。大正一一年(一九二二)南島原大地震の震源地千々石(ちぢわ)湾。

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改訂新版 世界大百科事典 「橘湾」の意味・わかりやすい解説

橘湾 (たちばなわん)

長崎県南部,長崎半島と島原半島に挟まれた海域。日露戦争で功績があった橘周太中佐(湾岸の雲仙市の旧千々石(ちぢわ)町出身)の名にちなんで命名された。千々石湾ともいう。湾奥部は陥没により生じたカルデラであるとの考え方があり,それによれば,北側の水深30mまで続く急崖はカルデラ壁,その沖合に広がる水深35~40mの平たんな海底面はカルデラ床である。湾底は粘土質・微砂質の堆積物で覆われている。南東部の南島原市の旧加津佐町津波見(つばみ)沖には,水深25mあたりに堆(たい)が発達する。湾内ではマイワシ,カタクチイワシを主体に,サバ,アジ,カレイなどを漁獲する。北岸の諫早市の旧飯盛町付近の岩礁ではアワビ,サザエ,ウニ,エビなどの漁獲もあり,長崎市戸石や旧千々石町を中心に,タイ,ハマチなどの養殖も行われている。石油備蓄のための大型タンカー停泊基地に利用される。湾岸東部の雲仙市の旧小浜町には小浜温泉(純食塩泉,100℃)がある。
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橘湾 (たちばなわん)

徳島県東部,阿南市にある湾。紀伊水道に面し,湾口の幅5km,奥行き7km。湾内の最大水深12m。湾岸は小湾入の多いリアス海岸で,早くから風待港,避難港として発達,江戸時代には塩田も開かれていた。北岸の埋立地に1963年四国電力の火力発電所が,次いで日本電工の工場が立地し,新産業都市地域に指定されて石油化学,貯油基地の立地計画があったが,住民の反対運動,経済情勢の変化などにより実現していない。湾内には小勝(こかつ)島,高島,野々島など大小の島々が散在し,〈阿波の松島〉の称があり,湾岸は国際キャンプ場として利用されている。小勝島は第2次大戦中,海軍の避難港としてのみでなく,特殊船の基地であった。北岸に近い弁天島は周囲120m,標高17mの小島であるが,30種の植物が自生し,特にアコウの熱帯性植物群落として1922年国の天然記念物に指定された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「橘湾」の意味・わかりやすい解説

橘湾(長崎県)
たちばなわん

長崎県南部、島原半島(しまばらはんとう)と長崎半島との間にある湾。千々石湾(ちぢわわん)ともいう。第三紀中期以降になって、この地に火山活動があり多量のマグマを噴出し、陥没カルデラを生じた。これが橘湾の起源で、千々石カルデラに海水が浸入して生じたものである。北岸は千々石断層の延長部にあたり、直線状の海岸線を示し、海底も海岸に接して30メートルの水深があり、湾内の大部分は水深30~40メートルの平坦(へいたん)な砂質の海底面を示し、これがカルデラの火口原と推定されている。海面上では一本釣り、延縄(はえなわ)、打瀬(うたせ)網漁業が主で、沿岸の岩礁地帯ではアワビ、サザエ、ウニ、ナマコの特産がある。湾の東岸に小浜温泉(おばま)、西岸に茂木(もぎ)港、北東岸に富津(とみつ)港、北西岸に網場(あば)港がある。1973年(昭和48)以降、石油備蓄の湾としてスタート、タンカー10隻(250万キロリットル)を国家備蓄していたが、1985年タンカー備蓄は終了した。

[石井泰義]


橘湾(徳島県)
たちばなわん

徳島県東部、阿南(あなん)市の南東にあり、紀伊水道に面したリアス海岸の湾。湾口幅5キロメートル、奥行7キロメートル。湾内には小勝(こかつ)島、高島、野々島など大小10余の島々が点在し、弁天島にはアコウなど熱帯性植物群落(国指定天然記念物)がある。「阿波の松島(あわのまつしま)」ともよばれ、室戸(むろと)阿南海岸国定公園域となっている。水深は約15メートルで、天然の良港をなし、古くは海賊の活躍した地で伝説も多い。北岸には埋立てにより阿南発電所が立地し、日本電工(株)も進出している。また、小勝島も西岸が埋めたてられ橘湾発電所が立地、稼動している。湾岸には国際キャンプ場がある。北部の津峯(つのみね)(284メートル)からの湾内の眺望はすばらしい。

[高木秀樹]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「橘湾」の意味・わかりやすい解説

橘湾
たちばなわん

長崎県南東部,長崎半島島原半島とにいだかれた弧状の湾。千々石湾ともいう。長崎半島側は野母半島県立自然公園,島原半島側の一部は島原半島県立自然公園に属する。湾域は潮流の関係から一つの独立した生態系をなし,小型底引網漁,小型揚繰網漁,刺網漁,一本釣りに適した漁場がある。雲仙市南西部の富津,長崎市東部の網場 (あば) が主要な漁港。 1978年から石油貯蔵基地として利用されるようになり,その後タンカーによる国家備蓄がはかられた。網場港からは天草へ定期航路がある。島原半島西岸の千々石にある砂丘海岸は海水浴場としてにぎわう。

橘湾
たちばなわん

徳島県東部,紀伊水道に面する湾。リアス海岸で,湾内には阿南市に属する小勝島,高島,野々島,弁天島などの小島が点在し,阿波松島と呼ばれる。弁天島には天然記念物の熱帯性植物群落がある。湾内にはキャンプ場も多く,観光開発が進み,室戸阿南海岸国定公園に属する。 1995年日本最大級の火力発電所である橘湾発電所建設のため小勝島周辺の埋立てが始った。

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百科事典マイペディア 「橘湾」の意味・わかりやすい解説

橘湾【たちばなわん】

長崎県南部,長崎半島島原半島に挟まれた海域。名称は,日露戦争で功績があった橘周太中佐(湾岸の千々石出身)に由来する。主にイワシ類のほか,サバ,アジなどを漁獲する。湾奥には小浜温泉があり,温泉街をなす。

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事典・日本の観光資源 「橘湾」の解説

橘湾

(徳島県阿南市)
日本の重要湿地500」指定の観光名所。

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