精選版 日本国語大辞典 「檜枝岐」の意味・読み・例文・類語
ひのえまた【檜枝岐】
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福島県南西端,南会津郡の村。人口636(2010)。栃木,群馬,新潟の3県に接する。東北地方第1の高峰燧ヶ岳(ひうちがたけ)(2356m)をはじめ,駒ヶ岳(会津駒),帝釈(たいしやく)山など標高2000mを超える山地が村域の大部分を占め,国有林が広がる。平地は伊南川上流の檜枝岐川に沿ってわずかにみられるが,高冷地のため農業はふるわない。第2次大戦前までは曲輪(まげわつぱ),へらなど木材加工を主産業としてきたが,1961年新潟県境の只見川に建設された奥只見発電所の固定資産税収入をもとに林産所,国民宿舎などの公共施設づくりが行われ,また群馬県境にある日光国立公園の尾瀬ヶ原など(現,尾瀬国立公園)の豊かな自然環境を生かした観光開発が進められている。1973年には温泉が湧出して全戸に給湯され,これを利用した宿泊施設のほか,アルザ尾瀬の郷などのリゾート施設が整備され,首都圏からの観光客も増えている。檜枝岐歌舞伎が伝わり,その舞台は国の重要有形民俗文化財。
執筆者:佐藤 裕治
全国有数の山村として知られる檜枝岐は周囲を高山にかこまれ,谷底高度も約900mの高冷地であるので,近年まで水田がほとんどない畑作村であり,ことに耕地の広い部分が焼畑であるため,雑穀主体の自給農耕を営み,かたわら木材加工および沼田街道の物資輸送によって生活した。焼畑を耕す期間は山中に出作り小屋を設け,そこで生活したという。夏季は山菜採り,冬季は積雪が多いので木工や狩猟が副業として営まれた。都会から遠くへだたって若者の集団生活などの古風な習慣や多くの俗信が残り,言葉も古いものが用いられているので,平家の落人の住みついたもののようにもいわれる。しかし,それらの古い習慣の大半はもともと平地の農村にもあったものが,山間で他地方からの情報流入が少なかったために,近年まで残存したものである。
執筆者:千葉 徳爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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