歌行燈(読み)うたあんどん

精選版 日本国語大辞典 「歌行燈」の意味・読み・例文・類語

うたあんどん【歌行燈】

小説泉鏡花作。明治四三年(一九一〇発表。破門された能楽界の新鋭主人公に、芸道精神の厳しさを描き、作者純粋へのあこがれを表わしたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歌行燈」の意味・わかりやすい解説

歌行燈
うたあんどん

泉鏡花の短編小説。1910年(明治43)1月『新小説』に発表。17年(大正6)8月春陽堂刊の『粧蝶集』に収録。鏡花の母は能楽にかかわる家の出であり、『歌行燈』は能の世界に題材をとる円熟期の作。恩地源三郎の養子喜多八は、能楽界の鶴(つる)とうたわれながら、若気の過ちから、同じ流儀の盲人宗山に芸のうえで侮辱を与え自殺に追い込む。宗山の娘お三重は芸者に身を落とし、破門された喜多八は、いまは博多節(はかたぶし)の門付(かどづけ)芸人。源三郎が鼓の名手雪叟(せっそう)と桑名に宿をとった夜、彼らの席によばれたのは偶然にもお三重であった。そこからほど近いうどん屋で酒を飲みながら懺悔(ざんげ)する喜多八。桑名の夜景のなかで宿命の糸がやがて一つに結び合わされる。緊密な構成をもつ傑作

笠原伸夫

『『歌行燈』(岩波文庫・旺文社文庫・新潮文庫)』『笠原伸夫著『歌行燈の空間構成』(『近代小説と夢』所収・1978・冬樹社)』

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デジタル大辞泉プラス 「歌行燈」の解説

歌行燈〔映画〕

1943年公開の日本映画。監督:成瀬巳喜男原作:泉鏡花による同名小説、脚色久保田万太郎撮影中井朝一出演花柳章太郎山田五十鈴大矢市次郎、村田正雄ほか。

歌行燈(うたあんどん)〔飲食チェーン〕

株式会社歌行燈が展開する和食店のチェーン。創業は1877年。

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